会社員から藍師/染師へ 東京から徳島に移住し藍染めの魅力を発信するWatanabe'sワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(22)(3/3 ページ)

» 2025年04月09日 09時00分 公開
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スケッチブックに記録された膨大なレシピ

――工房見学の際、渡邉さんは大きなスケッチブックを見せてくれました。

渡邉さん このスケッチブックに、6年間で100回分の仕込みデータを記録してきました。従来、原料の配合割合や発酵具合といった染液の仕込みは職人の勘が基本で、職人それぞれが秘伝のレシピを持っているような状態が当たり前でした。そうした中、私自身は染液の仕込みデータを記録し続け、それを分析することでより良い菌の発酵環境を見いだすことができました。その結果、品質の良いすくもや染液を安定生産できるようになりました。

 また、それを自分だけにとどめることはせず、ノウハウを開示して、他の人でも楽しみながら同じような色を出せる藍染めキットを用意し、展開しています。業界の広がりに貢献できたらと思っています。

6年間で100回分の染液の仕込みデータを記録してきた渡邉さん 6年間で100回分の染液の仕込みデータを記録してきた渡邉さん[クリックで拡大] 出所:ものづくり新聞

使ってこそ輝きが増す藍染め製品の魅力

ものづくり新聞 今後の活動方針について教えてください。

渡邉さん とにかく、体験をしてもらった方に「すごくきれいな色になった!」と喜んでもらえるのが一番うれしいですね。そうした活動を通じて藍染めを広めていくためにも、ワークショップやキットの制作は今後も継続していきたいと考えています。また、現在工房に隣接するショップで藍染製品を購入できるよう準備も進めています。

 藍染め製品は、使われないまま放置されると次第に色あせてしまいます。使い続けていただくことで鮮やかな色が保たれるものです。そういう意味でも、飾られるものではなく、たくさん使っていただけるような藍染め製品を作っていきたいです。

あとがき

 取材時は藍染めの体験をさせていただきました。その際、染液にも人間でいう年齢のようなものがあるということを知りました。他の訪問者の方々と別々の染液で染めた結果、若い、つまり藍建てをしてから日が浅い染液では濃い色に染まり、私が選んだベテランの染液では淡い色に染まりました。染める人や、その人が選ぶ染液、染め方によって唯一無二の色に仕上がる、藍染めの美しさに今後も注目していきたいです。(ものづくり新聞記者 佐藤日向子)

染める人やその人が選ぶ染液、染め方で唯一無二の色に仕上がる 染める人やその人が選ぶ染液、染め方で唯一無二の色に仕上がる[クリックで拡大] 出所:ものづくり新聞

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著者紹介

ものづくり新聞
Webサイト:https://makingthingsnews.com/
note:https://note.com/monojirei

「あらゆる人がものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」をビジョンに活動するウェブメディアです。
2025年現在、180本以上のインタビュー記事を公開。伝統工芸、地場産業の取り組み、町工場の製品開発ストーリー、産業観光イベント、ものづくりと日本の歴史コラムといった独自の切り口で、ものづくりに関わる人と取り組みを発信しています。

編集長

伊藤宗寿
製造業向けコンサルティング(DX改革、IT化、PLM/PDM導入支援、経営支援)のかたわら、日本と世界の製造業を盛り上げるためにものづくり新聞を立ち上げた。クラフトビール好き。

記者

中野涼奈
新卒で金型メーカーに入社し、金属部品の磨き工程と測定工程を担当。2020年からものづくり新聞記者として活動。

佐藤日向子
スウェーデンの大学で学士課程を修了。輸入貿易会社、ブランディングコンサルティング会社、日本菓子販売の米国ベンチャーなどを経て、2023年からものづくり新聞にジョイン。

木戸一幸
フリーライターとして25年活動し、150冊以上の書籍に携わる。2022年よりものづくり新聞の記事校正を担当。専門はゲーム文化/サブカルチャーであるが、かつては劇団の脚本を担当するなど、ジャンルにとらわれない書き手を目指している。

小柴寿美子
ナレーター。企業PV・Web-CMなど2000本以上。元NHKキャスター・リポーターとして番組制作をしていた経験を生かし、2024年9月からものづくり新聞へ参入。粘り強い取材力が強み。



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