このように見てきて痛感するのは、日本は社会実装に向けた「挑戦」の量も質も足りていないのではないか、ということである。投入するリソース(ヒト、モノ、カネ)、挑戦の総数、スピード、戦略性、いずれも不足しているのではないか。挑戦においては、量はもちろん、質も重要である。出口戦略を仮定し、共通の出口に向かって関係者のベクトルを合わせて取り組むことにより、短期的な社会実装の可能性も切り開かれ、また、中長期に取り組むべき技術課題も明確になる。
本連載でこれまで述べてきた通り、踊り場を迎え次の一手を模索するサービスロボット、デジタル技術との統合により高度化と簡易化の二極化に向かう産業用ロボット、ガバナンス整備との一体的取り組みが重要なフロンティア領域(公道、建設、海洋など)、いずれについてもロボット産業は大きな転換点にある。
筆者が所属しているPwCコンサルティングの「Technology Laboratory」は、最先端のテクノロジーを活用し、産官学の連携を支援することで社会課題の解決を目指す組織である。これまでにない新事業や新産業の創出に向けた支援ばかりであり、一筋縄ではうまくいかないものが大半という中で、組織として重視しているのが「挑戦」と、失敗に負けない「胆力」である。
これからますます重要性が増すロボット領域において、日本から多くの挑戦が生まれ、失敗から学びながら多くの力強い事例、ビジネス、産業、リーダーシップが育まれる。そうした未来に向けて、今後も取り組んでいく所存である。(連載完)
瀬川 友史(せがわ ゆうし) PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
大手シンクタンクおよび大手監査法人系コンサルティングファームにおいて、ロボット、ドローンなど先端技術の事業化および産業化をテーマに官公庁や大手企業、ベンチャー企業のコンサルティング業務に従事。現職ではロボティクスやモノづくり領域を中心に、官公庁、民間企業、研究機関に対し、先端技術の事業化、産業化に向けてビジョン策定から実行までを幅広く支援している。
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