産業技術総合研究所は、レーザー加工により、ガラス表面に低欠損でナノメートルサイズの周期構造を形成するデータ駆動型レーザー加工技術を開発した。ガラス表面へのナノ加工時の欠損率を従来法の約30分の1に低減している。
産業技術総合研究所は2025年3月24日、レーザー加工により、ガラス表面に低欠損でナノメートルサイズの周期構造を形成するデータ駆動型レーザー加工技術を開発したと発表した。東京農工大学との共同研究による成果で、低反射などの機能を必要な部分に付与した光学部品などの製造につながることが期待される。
ガラスにフェムト秒レーザーパルスを複数照射すると、表面にナノ周期構造を直接形成できる。研究グループはこれまでに、ナノ周期構造の加工時に光を用いてガラスの透過率と反射率を計測することで、その構造をリアルタイムにモニタリングする技術を開発している。
今回の研究では、レーザー加工中のナノ周期構造形成の検出対象として、光の波長以下の大きさのナノ周期構造に着目。このナノ周期構造がガラス表面にある場合、表面の反射率は低減して透過率が増加するが、この現象をモニタリングした。
実験では、合成石英ガラス表面にフェムト秒レーザーパルスを照射しながら、ガラスを一定速度で移動させてレーザー加工した。波長660nmと850nmの発光ダイオードを同軸落射、透過照明光源として使用し、波長ごとの顕微画像を取得。レーザー加工をしていない領域の顕微画像と比較することで、未加工領域からの反射光強度に対するレーザー加工領域からの反射光強度の比(相対反射率)と、未加工領域からの透過光強度に対するレーザー加工領域からの透過光強度の比(相対透過率)を計算した。
また、加工後のガラス基板の表面と断面を観察し、相対反射率と相対透過率とを関連付けたプロセスデータベースを作成した。その結果、周期が約200nm、深さが約1μmの直線状のナノ周期構造が均一に形成されていることが分かった。
次に、フェムト秒レーザーパルスの強度をフィードバック制御し、相対反射率と相対透過率が任意のナノ周期構造を形成する値となるよう調整した。1ライン照射領域内(長さ1mm)でのナノ周期構造の欠損率は2.4%で、制御しない場合の約10分の1に低減できた。横100μm、縦20μmの領域をレーザー加工した場合では、制御時のナノ周期構造の欠損率は約2%で、制御しない場合の約30分の1だった。これにより、光の透過率が大きい低反射ガラスの形成に成功した。
同システムは、レーザーパルスを照射する場所を動かすだけで加工部分を変更できるため、加工材料のサイズに制限がなく、メートルサイズにも対応する。今後は、より高速、大面積に対応する装置構成を検討し、製造ラインでの実装に向けた技術開発に取り組む。
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