非加熱で作れるPETボトル用無菌充填システム発売 液処理エネルギーを8割減脱炭素

アセプティック・システム(APS)は、非加熱滅菌システムと2段殺菌システムを搭載した新たな「PETボトル用無菌充填システム」を開発し、提供を開始した。

» 2025年04月04日 06時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 大日本印刷(DNP)グループでPETボトル無菌充填システムの開発を行うアセプティック・システム(APS)は2025年3月31日、飲料製造工程におけるCO2排出量削減を目指し、新たな「PETボトル用無菌充填システム」を開発し、提供を開始したと発表した。

新たな「PETボトル用無菌充填システム」 新たな「PETボトル用無菌充填システム」[クリックで拡大] 出所:DNP

新システム開発の背景

 グローバルにおける清涼飲料水市場の成長に伴い、PETボトルの使用増加が見込まれている。市場の拡大が見込まれる中で、飲料メーカーの環境配慮への取り組みも加速。一方、PETボトル入り飲料の製造工程で生じる清涼飲料水の充填における脱炭素化が課題となっている。

 PETボトル入り飲料の製造では、極小細菌が通過するリスクが残る「ろ過滅菌フィルター」の採用は限定的で、大量のエネルギーを使って約140℃で加熱するケースも多かった。これらの解決策としてAPSは新たなPETボトル用無菌充填システムを開発した。

新システムの特徴

 従来のPETボトル用無菌充填システムでは、製品原液(シロップ)を水で希釈した大量の飲料を超高温(Ultra-High Temperature:UHT)滅菌している他、容器の洗浄でもUHTにより加熱滅菌した水を使用している。

 新システムでは、PETボトル飲料製造における超高温UHT滅菌の一部を、ろ過滅菌フィルターと紫外線(Ultraviolet:UV)ランプを組み合わせた非加熱滅菌システム「GREEN ASEPTIC」による滅菌に置き換えている。GREEN ASEPTICにより滅菌した水を、飲料の希釈水や洗浄水に使用することで、従来の加熱滅菌と同品質の飲料を非加熱で製造することを実現。液処理で使用されるエネルギーを約80%削減することにも成功した。

 加えて、新システムは、ボトルの形状に膨らませる前(プリフォーム)と後の2段階で殺菌する。試験管のような形のプリフォームは、ボトルの形と比べて表面積がかなり小さいため、2段階殺菌で薬剤の使用量を約40%低減可能。殺菌の機器をコンパクトにしたことで、設置面積も約30%小さくできる。これにより、飲料メーカーは限られた工場内のスペースをより有効に使える。

PETボトルに飲料を充填する新たな「PETボトル用無菌充填システム」(左)とプリフォーム(右) PETボトルに飲料を充填する新たな「PETボトル用無菌充填システム」(左)とプリフォーム(右)[クリックで拡大] 出所:DNP

 今回の非加熱滅菌システムと2段殺菌システムは、高い省エネルギー性能が実証されたため、環境共創イニシアチブの2024年度補正予算「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」の先進設備・システムの補助対象設備として登録された。

新システムの価格と今後の展開

 新システムは1システム当たり25〜35億円。今後APSは国内だけでなく、中国や東南アジアなども含めた飲料メーカーに新システムを販売する。新システムの関連商材を含めて2030年度までに累計200億円の売上高を目指す。

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