世界初を目指し商用定常核融合炉のブランケット開発で協業材料技術

Helical Fusionは、三井金属鉱業と、商用の定常核融合炉に必須となる「ブランケット」の開発を共同で進める契約を締結した。

» 2025年04月03日 06時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 Helical Fusionは2025年4月2日、三井金属鉱業と、商用の定常核融合炉に必須となる「ブランケット」の開発を共同で進める契約を締結したと発表した。

ブランケット開発の重要性

 Helical Fusionが開発を進めている「ヘリカル型核融合炉」は、プラズマ研究/炉設計と工学研究成果の観点から、既に実用化に向けた課題をほとんどクリアしているという。残されたハードルの1つがブランケット開発だ。ブランケットは、ヘリカル型核融合炉が核融合反応から電気を作るために「エネルギーを取り出す」「燃料を増やす」「装置全体を守る」といった役割を担う重要な部品だが、製作の難易度が高く、グローバルでもまだ実装した装置はない。

 今回の契約を通じて、三井金属の高度な材料開発技術とHelical Fusionの核融合炉開発の知見を融合し、世界初の事例を目指してブランケット開発を加速する。

Helical Fusionが開発を進める「ヘリカル型核融合炉」(左)と「ブランケット」(右) Helical Fusionが開発を進める「ヘリカル型核融合炉」(左)と「ブランケット」(右)[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

ヘリカル型核融合炉開発の背景

 世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予測されている他、生成AI(人工知能)の普及などで世界的に電力需要が急増しており、将来は既存発電方法のみで電力のニーズに応えることは厳しい見通しだ。

 核融合発電は、太陽の輝きと同じ原理を使ったクリーンで安全性の高い発電方法で、海水からほぼ無尽蔵に採取可能な燃料を用いることからも、こうした世界的な課題を抜本的に解決する技術として期待されている。

 核融合のプラント建設および電力市場は2050年までに世界で年間5500億ドル規模にまで成長するとの試算もあり、今後自動車産業のように日本が世界をリードする産業を創出できる可能性がある。一方、国際的な開発競争も激化している。Helical Fusionは定常核融合炉を2034年までに実現し、世界中で商用化することで、持続可能なエネルギー源の社会実装を目指している。

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