バイオマスの固形ノボラック型変性フェノール樹脂を製品化、鋳型製造など向け材料技術

住友ベークライトは、非可食バイオマス由来原料であるリグニンを活用した「固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂」を発売した。

» 2025年04月01日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 住友ベークライトは2025年3月27日、非可食バイオマス由来原料であるリグニンを活用した「固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂」を発売したと発表した。固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂の商業化は世界初だという。

固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂について

 同社では、環境負荷低減を図るためにリサイクル技術とともにバイオマス材料の利用についても研究開発を進めてきた。フェノール樹脂への適用に有望なバイオマス材料として、リグニン成分の利用に関する基礎研究に2010年以前に着手。その後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業への参画などを通して、さまざまなリグニンを活用した樹脂合成/材料化技術の開発に取り組んできた。

 リグニンの早期かつ着実な社会実装を進めるため、住友ベークライトではまず安定調達が可能な紙パルプ製造の副生成物である「パルプ製造法由来リグニン」を活用したリグニン変性フェノール樹脂の量産体制を構築し、固形ノボラック型では世界初となるリグニン変性フェノール樹脂の商業化を実現した。

 固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂の1つである「スミライトレジンPR-L-0002」はRCS(レジンコーテッドサンド)メーカーにバインダー樹脂として既に採用されており、そのRCSは2024年初めから自動車メーカーで一部の自動車鋳造部品の生産に使用されている。

 PR-L-0002は、鋳造用RCSバインダー樹脂として使用した際に鋳造砂のリサイクル時に焼却されるが、既存品と同様に鋳造砂のリサイクルを阻害しない。同樹脂はバイオマス率15%で、既存品と比較して化石資源使用量を15%減らせ、カーボンフットプリント(CFP)も11%削減可能だ。今後、同社は他用途の固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂と同様に、PR-L-0002でも30%を超えるバイオマス率を目指す。

鋳型製造用途の使用例 鋳型製造用途の使用例[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト
鋳型製造用途でのPR-L-0002のCFPのイメージ 鋳型製造用途でのPR-L-0002のCFPのイメージ[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト
樹脂製造時のCFP試算 樹脂製造時のCFP試算[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト

開発の背景

 フェノール樹脂は「液状レゾール型」と「固形ノボラック型」に大別され、固形ノボラック型は自動車部品の鋳型製造を中心に利用されている。

 アルカリ触媒下で得られる液状レゾール型リグニン変性フェノール樹脂については、多くのリグニンがアルカリに可溶であることから研究例が多く、木質材料用接着剤として社会実装が進みつつある。

 住友ベークライトグループでも2024年に、合板や単板積層材の製造に用いられるフェノール樹脂接着剤において、液状レゾール型リグニンを用いた「スミタックPL-700シリーズ」を商業化した。

 一方、酸触媒下で得られる固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂は、多くのリグニンが溶融溶解しづらいために適用しづらく、社会実装も進んでいなかった。それに対して住友ベークライトは2019年にトンスケールの量産を実証してサンプル提供や試験販売を進めるなど各種用途への適用を目指してきた。その結果、今回の正式発売に至った。

固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂 固形ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト

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