次世代半導体向けの素材とプロセスを共創する研究所を設置研究開発の最前線

東北大学と住友ベークライトは、同大学 青葉山キャンパス レジリエント社会構築イノベーションセンター(仙台市青葉区)に「住友ベークライト×東北大学 次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」を2025年1月1日に設置する。

» 2024年12月11日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 東北大学と住友ベークライトは2024年12月9日、同大学 青葉山キャンパス レジリエント社会構築イノベーションセンター(仙台市青葉区)に「住友ベークライト×東北大学 次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所(以下、共創研究所)」を2025年1月1日に設置すると発表した。設置期間は2025年1月1日〜2028年3月31日。

 共創研究所では、パワーモジュール、パワーデバイス、AI(人工知能)関連のデバイスに関して、素材、材料設計、プロセス、性能評価、社会実装まで一気通貫した研究活動を行う。

今回の取り組み

 両者は今後求められる高度な機能を実現する素材、プロセス/評価技術を開発するために、東北大学構内に共創研究所を設立し、知識/技術の修得、東北大学所有の先進的な設備/機器を活用していくとともに、同活動を通じ、人材の育成を行う。

共創研究所の活動内容

 共創研究所では、住友ベークライトの強みである半導体用素材技術と、東北大学の次世代半導体デバイス、モジュール、パワーエレクトロニクス技術、次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」の活用および総合知を融合し、設計、プロセス、評価、社会実装まで一気通貫した研究活動を推進し、世界が求める素材、プロセス、評価技術を創出する。

 具体的には、「次世代パワーモジュールに求められる素材およびプロセスの開発」「チップレット集積技術に求められる素材およびプロセスの開発」「部門横断的な連携を通じ、半導体領域における新規研究テーマの探索」「素材、構造、プロセス、性能評価、社会実装に精通した人材の育成」を行う。

 「次世代パワーモジュールに求められる素材およびプロセスの開発」に関して、パワーモジュールへの取り組みとして、東北大学が開発した超高出力密度構造で、住友ベークライトが保有する多様な高機能樹脂製品、高熱伝導絶縁樹脂シート、セミシンタリング接合材、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料などを活用することにより、機能および構造的な優位性を提供し、パワーモジュールの性能を最大限引き出すことを目指す。

 具体的には従来使用されているセラミック製の絶縁材や、はんだ、銀フルシンタリング接合材などの代替品として、樹脂製の絶縁材、銀セミシンタリング材などを適用し、放熱性を向上。さらに、熱膨張ミスマッチの低減による低反り挙動を生かした組み立てやすさも可能にすることで、省エネ社会の実現に貢献する。

 「チップレット集積技術に求められる素材およびプロセスの開発」では、住友ベークライトが保有する半導体封止用エポキシ樹脂成形材料、感光性材料などを活用することで、高機能樹脂開発技術をベースとしたチップ間接合材などの開発を、東北大学のプロセス、評価技術と共創する。

 具体的には高密度化、高接続信頼性、高生産性の要求といった市場の動向に伴う技術確立と製品化により、次世代半導体パッケージの設計自由度の向上、生産効率の向上、データ通信の高速化、消費電力の削減など、3次元集積技術の進化に貢献する。

 「部門横断的な連携を通じ、半導体領域における新規研究テーマの探索」では、高機能化/小型化の実現に向け次世代パワー半導体チップを用いたデバイスに対して、最適なパッケージ構造の探索およびパッケージング材料への必要特性の見極めと開発に、東北大学と協力して取り組む。

 具体的には、現在主流であるシリコン、窒化ガリウム、シリコンカーバイドよりさらに先の次世代パワー半導体チップの候補である酸化ガリウムやダイヤモンドなどを用いたパッケージング技術の研究開発を推進し、小型で高機能なパワーデバイスの開発に貢献する。

 「素材、構造、プロセス、性能評価、社会実装に精通した人材の育成」について、今回の研究開発における性能評価ではNanoTerasu(住友ベークライトはコアリションメンバーとして加入済み)と連携していく。

 NanoTerasuは高輝度でかつコヒーレントな軟X線を使えるため、各種界面におけるイオンや軽元素の動的な状態の可視化が可能となる。

 そのため、パワー半導体における各種有機界面の密着状態解析を行える。加えて、各種有機界面における性能との相関や、リンと酸素を含む官能基における界面での配向状態の可視化など、ナノレベルで有機素材の界面の動的な可視化にも応じる。

 共創研究所では、NanoTerasuをはじめとした最先端の施設や設備の活用に加えて、次世代半導体の開発に取り組む若手研究者や社会人博士との交流を通じて、素材、構造。プロセス、性能評価、社会実装に精通した人材を育成する。

共創研究所での取り組みイメージ 共創研究所での取り組みイメージ[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト

共創研究所の運営体制

 運営総括責任者は東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター 特任教授の久保山俊治氏が担う。運営支援責任者は東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター 研究開発部門長 教授の高(正確にははしご高)橋良和氏が担当する。

 共同運営総括責任者は、東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター 特任准教授の堀井誠氏で、共同運営支援責任者は東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター センター長 教授の遠藤哲郎氏となる。

左から、住友ベークライト 執行役員の森健氏、取締役 専務執行役員の倉知圭介氏、東北大学 教授の遠藤哲郎氏(共同運営支援責任者)、教授の高橋良和氏(運営支援責任者) 左から、住友ベークライト 執行役員の森健氏、取締役 専務執行役員の倉知圭介氏、東北大学 教授の遠藤哲郎氏(共同運営支援責任者)、教授の高橋良和氏(運営支援責任者)[クリックで拡大] 出所:住友ベークライト

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