住友ベークライトは、フェノール樹脂に含まれる残存原料であるフェノール、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を0.1%未満まで低減した超低モノマー水溶性フェノール樹脂の製品群の販売を開始した。
住友ベークライトは2024年7月1日、フェノール樹脂に含まれる残存原料であるフェノール、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を0.1%未満まで低減した超低モノマー水溶性フェノール樹脂の製品群の販売を開始したと発表した。想定される用途は、接着剤、塗料、電子材料、半導体、炭素材料、電動車などの樹脂製品のバインダーあるいは添加剤となる。
同製品群は、2021年に開発を発表した超低モノマー完全水溶性レゾールの技術をベースに開発されたものだ。これらの製品は、残存フェノール、ホルムアルデヒドに由来する各種法規制に対しても非該当となることから、同社はこれまで法規制によりフェノール樹脂の使用が忌避されていた分野に向け熱硬化性の環境対応プラスチックとして提供していく。
同社は、過去に蓄積した反応条件から低モノマー化に最適な条件を計算し、これに特殊な触媒技術を組み合わせることで、化学物質管理に関する各種法規制の対象となる遊離フェノール、遊離ホルムアルデヒドを、閾値を下回る0.1%未満まで低減させ、作業時の臭気やVOCの低減を超低モノマー水溶性フェノール樹脂で実現した。
超低モノマー水溶性フェノール樹脂は、20倍以上の水希釈が可能で、粘度やアルカリ性も使用上問題にならない性能を確保し、水を添加しても白濁することなく透明性を保ったまま溶解できる他、高い水溶性も有する。さらに今回、従来のレゾール型均一水溶液に、各種機能を追加した高機能品のラインアップを拡充し、市場投入するに至った。
今後は、水性化や環境対応が可能な高機能品として、成長市場である半導体関連をはじめ、航空/宇宙産業や電池材料などのエネルギー関連用途へも拡大を図っていく。既に海外各拠点で量産化検討が進んでいる案件もある。将来的にはグローバル市場で年間50億円の販売を狙い、高機能フェノール樹脂として市場を拡大していく考えだ。
熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は、高い耐熱性を持ち、中でもレゾール型は、主に溶液状で取り扱われる。各種繊維やフィラーなどの基材と高い接着性を示すため、有機繊維、金属、ガラスなどさまざまな基材のバインダーとして使用されている。
しかし、溶液タイプのレゾール型樹脂を使用するにあたって、有機溶媒系では設備の防爆対策やVOC対策が必要になる。これに対し比較的環境負荷の小さい水溶液系のフェノール樹脂も使用されているが、疎水性が高いフェノール樹脂に水溶性を付与するとモノマー(低分子化合物)であるフェノール、ホルムアルデヒドが樹脂水溶液中に多く残存してしまい、これがVOCや臭気として発生する課題があった。そこで、同社は超低モノマー水溶性フェノール樹脂を開発した。
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