レゾナックとマイクロ波化学は、「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」を2025年3月に本格始動した。
レゾナックとマイクロ波化学は2025年3月27日、共同で進めるプロジェクトが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業(GI基金事業)/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に「混合プラスチックから基礎化学品を製造するケミカルリサイクル技術の開発」として採択されたと発表した。両社は同月から技術開発を本格始動している。
今回の取り組みは、両社が2022年に開始した共同開発をさらに発展/強化するもので、両社はGI基金事業による支援を受けながら、化石資源に頼らないプラスチック原料製造技術の確立を目指す。
レゾナックとマイクロ波化学は、使用済みプラスチックにマイクロ波を照射して分解し、基礎化学品を製造する技術の開発に2022年から共同で取り組んできた。マイクロ波加熱は、電子レンジでも使用されている方法で、対象物のみにエネルギーを伝達する。
両社が開発を進める技術では、マイクロ波のエネルギーを使用済みプラスチックに集中的に与え、効率よく基礎化学品へ分解。今回のプロジェクトでは、実際の混合プラスチックを直接基礎化学品に変換/再生する熱分解技術に関して、有用な基礎化学品を収率60wt%(重量パーセント)以上で製造し、製造時に排出されるCO2を0.8kg-CO2/kg-オレフィン(オレフィン換算のCO2排出量)以下にする技術の開発を行う。
同プロジェクトでは、まずラボ(実験室)、ベンチ(少量試作)スケールで分解プロセスや反応器形式の選定を行い、パイロット(中量試作)スケール、大規模実証スケールとスケールアップを行いながら条件の最適化を進める。また、商業化した際に生じ得る課題の抽出/対策も並行して実施する。
さらに、マイクロ波加熱などを活用した熱分解を年間数千トン(t)の実証スケールで行い、多様な使用済みプラスチックに対応できる技術の確立を目指す。
両社はこれまでに、新品のプラスチックを用いたモデル系での実験において、分解反応条件やプロセスの最適化に取り組み、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)の三元系では80wt%、より実際の混合プラスチックに近い、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニール(PVC)を加えた五元系では70wt%もの有用基礎化学品収率を実現している。
世界規模で資源循環社会およびカーボンニュートラルの実現に向けた動きが活発化する中、従来の化石資源を原料とし、製造工程および廃棄時の燃焼処理で多くのCO2を排出するプラスチックを再資源化し、プラスチック原料となる基礎化学品へと戻すケミカルリサイクルが求められている。
プラスチックリサイクル技術としては、高度に選別された、あるいは単一のプラスチックを、基礎化学品の原料となる混合油(ナフサ相当油など)に変換する油化技術、エチレン、プロピレンなどの基礎化学品に直接変換するケミカルリサイクル技術がある。
しかし、単一のプラスチックや選別されたプラスチックの量は限定的だ。また、プラスチックの選別/分離にはコストがかかり、分離困難なプラスチックも多く存在する。そのため、混合状態で排出される使用済みプラスチックを、高度選別を経ずに熱分解し、直接基礎化学品へ変換/再生するケミカルリサイクル技術を確立できれば、より一層の温室効果ガス(GHG)削減に貢献すると期待されている。
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