中央大学は、ブラシや筆で塗るだけで作成可能な高感度光学センサー素子を開発した。カーボンナノチューブとビスマス化合物を組み合わせて高感度光ペーストを生成した。
中央大学は2025年2月25日、ブラシや筆で塗るだけで作成可能な高感度光学センサー素子を開発したと発表した。カーボンナノチューブ(CNT)とビスマス化合物(Bicom)が一体化し、高効率な吸光特性と熱電変換特性を兼ね備える。
センサー素子の作製には、光エネルギーを熱エネルギーへ、さらに電気エネルギーに変換する光熱起電力効果(PTE)を利用。従来のPTEセンサーは、単一素材を用いるため動作感度や検出できる波長帯域に制約があったが、CNTとBicomを組み合わせることでこの課題を克服した。
CNTは可視光からミリ波、テラヘルツ波まで90%以上の吸収率を持ち、幅広い波長域の光を熱に変換できる。一方、Bicomは室温帯で最高レベルの熱電変換効率を誇るが、従来はバルク状で扱いにくかった。そのためBicomを粉砕処理で粉末にし、導電性高分子溶媒を添加することでペーストを生成、CNT分散液と併せることで自在に塗布可能なセンサーを作成した。
センサーの応答信号強度は、従来型PTE構造と比較して13倍以上に向上した。200回の折り曲げ試験でも素子感度誤差率を5%以内に抑えるなど耐久性にも優れる。ボールカメラなど立体形状にも適用可能で、非破壊3D検査にも応用できる。
今後は、センサーとCNTアンテナとの結合による高感度化や大面積のカメラシート化、高伸縮性素子化、Bicomに続く材料候補の探索を進め、10年以内に液剤ボトルとして提供できる非破壊検査デバイスプラットフォームとしての展開を目指す。
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