パーソル総合研究所は「正社員として20年以上勤務した60代の就労実態調査」の結果を発表した。就業率は60代前半で95.8%、後半で89.3%と高いものの、役割認識やモチベーション、専門性は低い傾向が見られた。
パーソル総合研究所は2025年2月6日、「正社員として20年以上勤務した60代の就労実態調査」の結果を発表した。
同調査は、2024年10月18日から23日にかけてオンラインで実施したものだ。調査会社モニターを用いた定量調査で、全国の55〜69歳の男女5000人を対象としている。
正社員として20年以上勤務した60代前半の就業率は95.8%、60代後半は89.3%となった。同年代全般を対象にした総務省の「労働力調査」(2023年)では前者が74.0%、後者が52.0%となっており、ともに大きく上回っている。
また、就業者に占める男性の割合は、60代前半では78.0%、60代後半で82.0%。男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年で、その一期生が2024年で60歳に達するため、今後は女性の比率が高まる可能性が考えられる。
雇用形態は、60代前半は継続勤務者(55歳時点で勤めていた企業やそのグループ企業に勤める正社員、定年再雇用、契約および嘱託社員)が73.3%を占めた。転職者(55歳時点で勤務していた企業から転職した人)を含めると、正社員などの勤務が89.1%となっている。60代後半は、継続勤務者が44.7%まで減少するが、転職者を含めた正社員などの勤務は66.1%を占めた。
フルタイムの就労率を見ると、60代前半は継続勤務者が95.7%、転職者が88.2%。60代後半では継続勤務者が85.5%、転職者は75.5%となった。
収入のボリュームゾーンは、60代前半、後半ともに、継続勤務者が「400〜700万円未満」、転職者が「200〜400万円未満」だった。
人事評価制度の適用率は、継続勤務者は60代前半が61.2%、60代後半では47.5%となった。転職者では60代前半、後半ともに3分の1程度に留まっている。
昇給、昇格や賞与査定制度の適用率は、60代前半の継続勤務者が49.9%、60代後半では40.8%となった。転職者では60代前半、後半ともに4分の1程度となっている。正社員などであっても、半数以上の人は昇給や昇格が適用されていないことが判明した。
役職登用機会を有する人は、継続勤務者で2割強、転職者では1割前後に留まっている。
仕事に対する満足度については、60代前半は5割前後、60代後半は5割強が仕事に「満足(している)」と回答した。継続勤務者、転職者、パート、アルバイトの全てにおいて、60代前半よりも60代後半の方が満足している人が多い。エイジングパラドックス(高齢になると身体的および認知的な能力が低下する一方で、主観的幸福感が維持または向上する傾向を指す)や、不満足な人はリタイアしていくことなどが原因と見られる。
続いて、処遇の変化について調べた。継続勤務者のうち、「給与、賞与が下がった」人は60代前半が60.0%、60代後半は65.1%となった。
「給与、賞与が下がった」と回答した人に、自分の価値が低下したように感じたかを尋ねると、「あてはまる」が60代前半は49.0%、60代後半では40.8%を占めた。会社員としてのキャリアが終わったように感じたかについては、60代前半は43.4%、60代後半は34.6%が「あてはまる」と回答している。
また、「給与、賞与が下がった」人のうち、「仕事のモチベーションが下がった」に「あてはまる」と回答したのは、60代前半が56.7%、60代後半が45.6%となった。「会社に対する忠誠心が下がった」は、60代前半の46.2%、60代後半の34.3%が、「あてはまる」と回答。いずれも給与が低下していない人より割合が多く、約3〜5倍となっている。
職場で自分の役割を重要だと感じている人は、60代前半の継続勤務者や60代前半および後半の転職者などでも半数未満となった。パートやアルバイトでは4割未満に留まっている。
社外で通用する専門性やスキルを持つ人は、60代後半の継続勤務者や60代前半および後半の転職者で65%前後となった。60代前半の継続勤務者はやや少なく59.4%となっている。パートおよびアルバイトでは半数に満たなかった。
職場から期待されている役割、自分が果たしたい役割では、60代前半後半、雇用形態に関わらず「担当者としてのパフォーマンスの発揮」「高い専門性の発揮」が比較的多かった。ただし、いずれも回答率が5割前後に留まっている。
調査を実施したパーソル総合研究所は、以上の結果を総合して、60代が会社の中核業務を担う基幹戦力人材として機能しているかどうかに疑問が残るとした。要因として、「役割認識の低さ」「モチベーションの低さ」「専門性の低さ」を挙げている。今後、60代を組織の中核的な戦力として位置付けるには、働き方の選択肢を増やす、処遇を改善するなど、能力を引き出すための十分な仕組みづくりが必要と提案している。
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