パーソル総合研究所は、産業能率大学と共同で実施した「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」の結果を発表した。「学び直し」の重要性を70%が認識していたが、実際に学び直しをしている層は14%にとどまった。
パーソル総合研究所は2023年8月31日、産業能率大学と共同で実施した「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」の結果を発表した。同調査の対象者は、最終学歴が高卒以上の35〜64歳の男女就業者で、3万6537人から回答が得られた。
初めに、仕事やキャリアに関する学び直しについてどのように考えているかを尋ねた。その結果、「何歳になっても学び続ける必要がある時代だ」と70.1%が回答した(「あてはまる」17.9%、「ややあてはまる」52.2%)。また、63.0%が「学び直しは将来のキャリアに役立つと思う」と回答した(「あてはまる」12.4%、「ややあてはまる」50.6%)。
「仕事のことは、仕事の中で学ぶのが一番だ」という考えに対しては、「あてはまる」が16.9%、「ややあてはまる」が53.2%となり、70.1%が、仕事のことは仕事の中で学ぶのが一番という考えを持っていることが分かった。また、学び直しをしている就業者の56.2%が「業務時間外の学習、自己啓発についてあまり周囲に言わない雰囲気がある」と回答した(「あてはまる」14.9%、「ややあてはまる」41.3%)。
「学び直しタイプ」の割合を見ると、実際に学び直しをしている「学び直し層」は14.4%だった。趣味の学習だけをしている「趣味学習層」は8.2%、学び直す意欲はあるが、特に学んでいることはない「口だけ層」は29.8%となっている。
「学び直し層」の学び直しの種類は、「アップスキリング(本業に関する学習)」が71.1%を占めている。「リスキリング(本業以外の仕事やキャリアに関する学習)」は47.0%だった。
学習内容を見ると「英語」(19.7%)が最も多かった。次いで「IT」(12.4%)、「資産形成、資産運用」(5.7%)、「医療、医学」(4.6%)、「語学(英語に限定されない)」(4.6%)となっている。
次に、「口だけ層」を対象に「学び直していない理由」を尋ねたところ、トップ3は「学ぶためのお金の余裕がない」(33.6%)、「学ぶ時間が作れない」(32.2%)、「学ぶための精神的余裕がない」(29.3%)だった。学ぶ対象や学ぶ方法が分からないことを理由に挙げる人も2割前後と比較的多かった。
続いて、学び直しタイプ別の「個人年収」を調べた。いずれの年代も、他の層と比べて「学び直し層」は年収が高かった。50〜54歳は平均642万円となっている。
学び直しをしていないミドル、シニアの正社員と同質のグループが学び直していたと仮定し、「学び直していない場合との個人年収の差」を推定したところ、個人年収は「平均+12万円」、3年以上の学び直しに限定すると「平均+30万円」に高まった。
また、「学び直し層」における「学び直しの実利的効果」を調べたところ、60.7%が「仕事のパフォーマンスを高められた」と回答。「学びが将来のキャリアに生かされると思う」は68.1%となっており、多くが仕事やキャリアへの効果を実感していることが分かった。
次に、「通常業務とは異なるプロジェクトへの参加」「出産、育児」など、社会人になってからのさまざまな転機での学習度合いを「転機学習度合い」と定義し、個人年収や職位との関係を調べた。その結果、学歴を問わず、過去の転機で学習していた度合いが高い人ほど個人年収が高く、管理職や取締役、社長など要職に就いている割合が高い傾向があった。
「20代、学生時代の学習経験別」に個人年収を調べたところ、男女共に20代で「業務外の学習、自己啓発に取り組んだ経験」がある方が、現在の個人年収が高い傾向が見られた。学生時代の学習態度よりも、20代での学習、自己啓発経験がある方が年収を高めていた。
次に、学び直しによる仕事の成果向上を実感していると回答した人に、「学び方」を尋ねた。すると、「体験、活用しながら学んでいる」「学びの全体像を把握しながら学んでいる」「人と関わりながら学んでいる」「仕事に役立つことを学んでいる」といった特徴が抽出された。
続いて、学び直す意欲があると回答した人の「学び直し実行率」を調べた。実際に学び直しを実行している「学び直し積極層」は26.0%にとどまっており、特に学んでいることはない「口だけ層」は60.9%を占めた。
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