積水化学が材料の解析ノウハウを集約したノーコードMIアプリを正式運用開始マテリアルズインフォマティクス

積水化学工業は、材料開発におけるマテリアルズインフォマティクスの推進に向け、独自のMIアプリ「RASIN(ラシン)」の正式運用を開始した。

» 2024年12月23日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 積水化学工業(以下、積水化学)は2024年12月20日、材料開発におけるマテリアルズインフォマティクス(MI)の推進に向け、独自のMIアプリ「RASIN(ラシン)」の正式運用を開始したと発表した。RASINという名称はR&D Accelerator for SEKISUI's Innovative Notionsの略で、同アプリが研究開発の羅針盤となることを意図している。

RASINの特徴

 RASINは積水化学のMI専門部署が蓄積してきた解析ノウハウを集約し、プログラミング技術が不要なノーコードアプリとして開発された。MI専門部署ではフィルムや複合材料、触媒分野など積水化学グループの材料開発領域でMI活用を進めており市場へ展開されている製品も数多くある。同部署で実績がある開発手法を、研究開発者がRASINにより現場で活用することが可能になった。

 同社はRASINを使ってMI技術を学べる新しい教育プログラムも導入した。このプログラムにより、プログラミング教育にかかる時間を省き、MIの理論と実践を集中して学ぶことで、研究開発者は短期間で材料開発にMIを活用できるようになった。

積水化学グループでのMI活用イメージ 積水化学グループでのMI活用イメージ[クリックで拡大] 出所:積水化学

 材料開発でMIを活用する際に専門家に相談し、解析結果や改善方法などを議論できる窓口を含めたサポート体制も構築した。これにより、研究開発者のMI技術の深化/高度化を継続的に支援していく。

 今後は、RASINの活用を通してMI技術の理解を深めた研究開発者に向けたさらなる機能の導入や、より専門的なMI技術教育プログラムの提供を行い、積水化学グループのMI活用を一層進めていく。

RASIN開発の背景

 MIとは、統計分析などを活用したインフォマティクスの手法により、材料開発を効率化する取り組みだ。これまでの材料開発は、研究開発者の経験や勘に大きく依存し、実用化までに長い時間と費用を要していた。

 一方で、市場では製品ライフサイクルの短命化、資源の制約などを起点として、材料開発への要求が多様化/高度化しており、世界的にMIへの取り組みが本格化している。

 積水化学は、サステナブルな社会の実現と企業としての持続的な成長の両立を目指す長期経営ビジョン「Vision 2030」の実現に向けた施策の一環として、MI専門部署の支援によりMIを活用した材料開発に取り組んでいる。

 その成果として、さまざまな新材料の開発スピード向上や高度化を実現してきた。また、MI専門部署以外の研究開発者を対象とした教育プログラムを提供し、各部署での自律的なMI活用や、全社での活用拡大に向けた取り組みを推進している。

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