JEITA 会長の津賀一宏氏(パナソニック ホールディングス 取締役会長)は「ソフトウェアの重要性が高まるのは自動車に限ったことではない」とコメントした。
「デジタルテクノロジーを使うエッジサイドのソフトウェア開発力が勝負の行方を左右するソフトウェアデファインドの時代がこれから来る。モノづくりでデジタル技術による生産性向上を目指すソフトウェアデファインドマニュファクチャリングがすでに始まっている。ただ、AI(人工知能)などデジタルテクノロジーを実装するには、ソフトウェアを導入するだけでなく、現場と一緒になって変えていくことが最も重要になる。ソフトウェア開発力を高めていくことは、デジタル赤字の解消にもつながるだろう」(津賀氏)
ただ、ソフトウェアを含めたソリューションの展開に当たっては、日本はIT人材やデジタル人材が不足しているのが課題だという。「ハードウェアはベテランが多く、元気に活躍してくれているが、ソフトウェアは若い人たちで部門を構成していく必要があるので、若手の活用や育成が重要だ。人材のポートフォリオをグローバルに、きちんとマネジメントしていけば、競争力は上がっていくだろう」(津賀氏)
津賀氏はSDVに対する期待や課題についても言及した。「例えば30年前、AV機器はアナログで構成されていて極めてハードウェアオリエンティッドだったが、どんどんコンピュータ化していった。コンピュータ化できるかどうかを左右するのは、コンピュータから見たときにどれくらいIOが複雑なのか、どのくらいリアルタイム制御が必要なのかという点だ。AV機器はコンピュータ化が早かったが、その流れが自動車にも来たと考えている」(津賀氏)
「ただ、自動車は複雑で、安心安全の要素と、エンターテインメントや通信の要素がある。SDVやそのアーキテクチャは単にコンピュータ化するのではなく、コンピュータをいかに自動車に合わせて使いこなしていくかが求められるのではないか。コンピュータ化が進めば開発効率が向上できるというメリットもある。自動車のインフォテインメントシステムだけでも膨大な開発工数があり、自動車メーカーの仕様ごとにテスト工数が発生する。PCにとってのMicrosoft、スマートフォンにとってのiPhoneのように標準化や集約が進めばメリットが出てくる。シミュレーションなど開発環境のレベルを上げていくこともできる。要求が複雑になっていくと、コンピュータ化せざるを得ないと個人的には思っている」(津賀氏)
「サプライヤーの立場でいろいろな自動車メーカーと取引しているが、日系で力を合わせてプラットフォーム化や標準化を進めて日本がメリットを得られるようになることを期待している。複雑なプロジェクトほどコミュニケーションが重要で、言語が壁になる。しかし、現地の組織能力を高めていけば、入っていくことはもちろんできる。各社の特徴や個性を求められるところでは競いながら、共通化や標準化もできるだけ進めていくことは体力強化の面でも理にかなっているのではないか」(津賀氏)
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