マテリアル領域におけるライセンス型事業の事例としてテクノロジーバリュー事業開発(TBC)で進める「リチウムイオンキャパシター技術」と「超イオン伝導性リチウムイオン電池電解液技術」の収益化が紹介された。
TBCとは、旭化成が蓄積した膨大な技術から成る無形資産であるパテント、ノウハウ、データ、アルゴリズムなどを価値化し、ライセンスに限定しないさまざまな形態で提供して、高速でアセットライトな収益化を目指すモデルだ。
具体的には、同社のパテント、ノウハウ、データ、アルゴリズムを用いて、共創により価値設計を行い収益を得るとともに、これらで作成された材料や技術の利用権供与、サービス化、所有権移転で収益を獲得する。久世氏は「当社ではTBCの利益目標として2035年年度に300億円を掲げている」とコメントした。
リチウムイオンキャパシター技術の収益化では、従来のリチウムイオンキャパシターと比べ容量を1.3倍向上したリチウムイオンキャパシターを製造できるリチウムプレドープの技術をはじめとするコア技術に関する特許と技術ノウハウをライセンスパッケージ化。このライセンスパッケージを電池/機器メーカーへ提供し、リチウムイオンキャパシターの製造コスト削減や開発期間の短縮を後押しする。リチウムプレドープや電極製造の技術についてはDX基盤で顧客と事業共創を行っている。このリチウムイオンキャパシターの用途としては、バックアップ電源や産業機械、公共機器(太陽光発電システムなど)での利用を想定している。
超イオン伝導性リチウムイオン電池電解液技術の収益化では、旭化成の蓄電/材料技術(電解液組成設計技術、界面制御技術)を生かし、既存電解液と比べて高いイオン伝導性を有する電解液を開発。この電解液を用いて、電池メーカーとリチウムイオン電池の共創を行っており、既にPoC(概念実証)に成功している。
今後は、従来品と比較して高容量で広い温度範囲で作動し小型で低コストなこのリチウムイオン電池をリチウムイオン電池メーカーへ提供する。同電池の用途としては電気自動車(EV)を想定している。このリチウムイオン電池をEVに搭載することで、走行距離の延長や寒冷地での長距離走行、高温環境での長寿化を実現できるとみている。
なお、同社は既にCO2を原料として消費する生産プロセスの技術やノウハウをライセンス化し、国内外の化学メーカーに提供しており、採用実績も有している。具体的には、リチウムイオン電池の電解液用原料の生産技術と、CO2利用プロセス技術や超精密精製技術を組み合わせたポリカーボネートの生産技術に関して、工場の建設から完成後の安定運転までの技術やノウハウをライセンス化し、国内外の化学メーカーへ提供している。
リチウムイオン電池の電解液用原料の生産技術が適用された工場では1年間当たりCO2を11万トン(t)消費したケースもある他、ポリカーボネートの生産技術が適用された工場では1年間当たりCO2を20万t消費した事例もある。
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