経産省が半導体供給確保の助成を追加認定、デンソー富士電機含め8件で1013億円製造マネジメントニュース

デンソーと富士電機はSiCパワー半導体の投資と製造連携を行う供給基盤の整備/強化を目的とする「半導体の供給確保計画」が経済産業省に認定された。これを含めて半導体6件、先端電子部品2件の助成が認定されており総額は1013億円に上る。

» 2024年12月02日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 デンソーと富士電機は2024年11月29日、両社で経済産業省に共同申請した、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の投資と製造連携を行う供給基盤の整備/強化を目的とする「半導体の供給確保計画」が認定されたと発表した。事業総額は2116億円で、約3分の1に当たる最大705億円が政府から助成される予定だ。

 今回申請した計画の対象となる生産拠点は、デンソーの大安製作所(三重県いなべ市:SiCウエハー)と幸田製作所(愛知県幸田町:SiCエピタキシャルウエハー)、富士電機の松本工場(長野県松本市:SiCエピタキシャルウエハー、SiCパワー半導体)の3拠点。各拠点の供給開始時期と生産能力(全て8インチ換算)の計画は以下の通り。

富士電機の松本工場 富士電機の松本工場[クリックでWebサイトへ]

 デンソーの大安製作所のSiCウエハーは2026年9月で年産6万枚。同社の幸田製作所のSiCエピタキシャルウエハーは2026年9月で年産10万枚。富士電機の松本工場は2027年5月で、SiCエピタキシャルウエハーが年産24万枚、SiCパワー半導体が年産31万枚。

 デンソーは、電動化の進展を見据え、ウエハーや素子、モジュールからインバーターに至るまで、高品質/高効率を実現するためのSiC技術を総合的に開発してきた。一方の富士電機も、パワーエレクトロニクス機器の高効率化や小型化に貢献するSiCパワー半導体素子の開発から量産まで一貫した体制を備えてきた。両社は今回の投資と製造連携により、車載分野における製品開発力と生産技術力を生かし、広く国内のSiCパワー半導体の効率的かつ安定的な供給能力拡大を目指すとしている。

カナデビア、タキロンシーアイ、三井ケマーズ、東洋合成、三菱ケミカルも

 また、経済産業省は同日、デンソーと富士電機の1件を合わせて半導体で6件、先端電子部品で2件の供給確保計画を認定している。助成金額は合計で最大1013億円となる。

 カナデビアは、半導体製造装置を構成する部素材であるラッピングプレート(鋳物研磨定盤)について、若狭事業所(福井県高浜町)の生産能力を強化する。事業総額は27億円で最大助成額は9億円。供給開始時期は2027年4月、生産能力は年産2050セット。

 タキロンシーアイは、半導体製造装置向け樹脂プレートについて、揖保川事業所(兵庫県たつの市)と子会社であるタキロンテックの網干工場(兵庫県たつの市)の生産能力を強化する。事業総額は44億円で最大助成額は14億円。供給開始時期は2027年1月、生産能力は年産2000トン。

 三井・ケマーズ フロロプロダクツは、半導体製造装置用樹脂について、清水工場(静岡市清水区)の生産能力を強化する。事業総額は非公表だが、最大助成額は80億円で助成率は3分の1以下となっている。供給開始時期は2028年12月、生産能力を従来比で60%引き上げるとしている。

 東洋合成工業は、先端フォトレジスト向け原料(感光材、ポリマー、高純度溶剤)について、千葉工場(千葉県東庄町)、市川工場(千葉県市川市)、淡路工場(兵庫県淡路市)の生産能力を強化する。事業総額は211億円で最大助成額は70億円。各拠点の供給開始時期と生産能力は、千葉工場が2029年4月で感光材とポリマーの生産を2024年比1.4倍に引き上げ、市川工場と淡路工場が2027年9月で感光材とポリマーの生産を2024年比1.4倍に引き上げるための高純度溶剤の生産能力の確保となっている。

 三菱ケミカルは、半導体部素材である合成石英粉について、九州事業所の福岡地区(北九州市八幡西区)の生産能力を強化する。事業総額は非公表だが、最大助成額は約37億円で助成率は3分の1以下となっている。供給開始時期は2028年9月、生産能力を従来比で35%引き上げるとしている。

 先端電子部品の供給確保計画で認定された2件はBAW(バルク弾性波)フィルターが対象。スカイワークスフィルターソリューションズジャパンは、大阪事業場(大阪市住之江区)の生産能力を強化する。事業規模は約134億円、最大助成額は約44億円。供給開始時期は2027年4月、生産能力は8インチウエハー換算で年産2万8800枚。

 村田製作所は、金沢村田製作所(石川県白山市)の生産能力を強化する。事業規模は約164億円、最大助成額は約54億円。供給開始時期は2028年3月、生産能力は年産4.8億個。

 経済安全保障推進法に基づく経済産業省による半導体の供給確保計画の認定は2023年度から始まっている。2023年12月までで18件が認定されおり、助成額が最大だったのはロームと東芝のSiCパワー半導体とSiCウエハーの生産能力強化で、事業総額が約3883億円、最大助成額が約1294億円だった。この他、2023年7月認定のSUMCOのシリコンウエハー生産能力強化が、事業規模2250億円、最大助成額750億円であり、今回のデンソーと富士電機の助成額は3番目の大きさとなる。

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