村田製作所がみなとみらいに未来のモビリティの共創スペース、略して「MMM」組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

村田製作所が車載ソリューションのリアル体験型施設「MURATA みらい MOBILITY」をリニューアルし報道陣に公開した。今後は年間で約250件の来場を見込む。

» 2025年04月24日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 村田製作所は2025年4月22日、同社の研究開発拠点であるみなとみらいイノベーションセンター(横浜市西区)に開設している車載ソリューションのリアル体験型施設「MURATA みらい MOBILITY」を報道陣に公開した。同年1月末から段階的なリニューアルを進めて3月末に完成したことに合わせた報道公開となる。今後は年間で約250件の来場を見込む。

村田製作所の柴原輝久氏 村田製作所の柴原輝久氏

 MURATA みらい MOBILITY(略称はMMM)は、2020年12月のみなとみらいイノベーションセンターの開業に続き、2021年5月に開設された。村田製作所 事業開発本部 共通基盤技術センター 設計プロセス開発部 部長の柴原輝久氏は「開設から約4年間運営してきたMURATA みらい MOBILITYは車載市場の顧客とコミュニケーションを深める上で役立ってきた。今回展示内容が古くなってきたこともあり、新たな展示を追加してリニューアルすることになった。当社は電機製品の市場拡大と併せて成長してきたが、足元のスマートフォンに次ぐ成長エンジンの模索に苦しんでいる。もちろん車載分野には大きく期待しているが、電機業界と自動車業界では商習慣が異なる点もあり、リニューアルしたMURATA みらい MOBILITYでは自動車業界を中心とする顧客とより深いコミュニケーションをとる狙いがある」と語る。

「展示施設」から「展示共創施設」へ

 2021年5月開設時のMURATA みらい MOBILITYの目的は「(1)お客さまとムラタの技術をつなげ、次の商品・ソリューションを生み出す」「(2)モビリティ市場におけるムラタのプレゼンスを上げる」の2つだったが、当初優先されていたのは後者の(2)だった。このため、MURATA みらい MOBILITYの展示は、当時の最先端に近い海外自動車メーカー製プラグインハイブリッド車の2016年モデルのカットモデルや、クルマ5台分から取り出した村田製作所の積層セラミックコンデンサーをはじめとする電子部品を搭載した車載基板の展示を中心とする「展示施設」になっていた。

「MURATA みらい MOBILITY」のアイコンともいえるカットモデルはリニューアル後も継続して展示されている 「MURATA みらい MOBILITY」のアイコンともいえるカットモデルはリニューアル後も継続して展示されている[クリックで拡大]

 しかし、この4年間で村田製作所の車載市場におけるプレゼンスは大幅に高まった。MURATA みらい MOBILITYに累計で約800件の来場があったことに加え、村田製作所におけるモビリティ分野の売上高比率も大幅に拡大している(例えば、2014年度の15.1%に対して2024年度は26.4%の見込み)。

 そこで今回のリニューアルでは、先述した目的のうち(1)を重視し、来場した顧客とより深いコミュニケーションを行うための展示や仕掛けを追加して「展示施設」から「展示共創施設」に進化させることを目指した。

5〜10年先を見据えた新しい技術を「素材」として展示

 新たに追加した展示は「Next-Materialエリア」「Solution-Panelエリア」「Communicationエリア」の3つである。

Next-Materialエリア

 Next-Materialエリアでは、5〜10年先を見据えた新しい技術について、「振」「音」「熱」「触」「匂」「視」といった漢字一文字のカテゴリーサインに分類した「素材」という形で展示している。「現時点で出口が分かっていない技術だからこそ、来場した技術者などに強い興味を持ってもらえるし、そこを切り口により深くコミュニケーションできるようになる」(村田製作所 技術・事業開発本部 共通基盤技術センター 設計プロセス開発部の興膳義明氏)という。

「Next-Materialエリア」の展示 「Next-Materialエリア」の展示。漢字一文字のカテゴリーサインで分類している[クリックで拡大]

 「音」の展示である「超音波透過メタマテリアル」は、微小な共振子構造を組み込んだ素材を用いることで超音波の透過率を向上できる技術だ。例えば、従来は難しかった頭蓋への超音波検査が可能になる。車載分野であれば、自動車の駐車時に用いられている超音波センサーをバンパー内部に組み込むことで、車両のデザイン性の向上や超音波センサーが外部に露出しないことによる高い耐久性などが期待できる。

「超音波透過メタマテリアル」の展示 「超音波透過メタマテリアル」の展示[クリックで拡大]

 現時点でNext-Materialエリアの展示は8点だが、スペースとしては最大24点まで増やせることもあり、今後も順次拡充を続ける方針である。

Solution-Panelエリア

 Solution-Panelエリアでは、「人とくるまのテクノロジー展」や「オートモーティブワールド」などモビリティ市場向け展示会で出展している最新製品のポスターをパネル化して常時展示している。最新の展示会で使用したポスターを使って、随時アップデートしていくので、常に最新の話題を提供できるようになっている。

「Solution-Panelエリア」の展示 「Solution-Panelエリア」の展示[クリックで拡大]

Communicationエリア

 会見場としても利用されたCommunicationエリアは、半円形に構成されたソファを中心に20人ほどが座れるようになっている。ソファや机などは自由に移動できるので、来場客の望む形に仕立てることが可能だ。Next-Materialエリアの素材や説明パネル、Solution-Panelエリアのパネル、村田製作所の部品が搭載された車載基板は全て取り外して持ち運べるようになっており、それらを手に取ってCommunicationエリアで議論や技術交流が行える。実際に手に取って話をすることで、イメージの共有や議論が進みやすくなる。

「Communicationエリア」の様子 「Communicationエリア」の様子。今回は会見場として利用された[クリックで拡大]
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