エアアクチュエータや電動アクチュエータ、センサー、カメラなどを使用する機構では、配管や配線のルートやスペースについて必ず検討する必要があります。
これらの部品が固定部に設置されるのであれば問題は少ないのですが、可動部上に設置するとなると、特に配置スペースの問題が起こりやすいです。「たかが配管/配線でしょ?」という認識で、設計でまともな検討すらしないエンジニアも一定数いるのですが、決して侮ってはなりません。
可動部上に配管や配線を施工する場合、可動部の動きに配管/配線がうまく追従するようにしつつ、周辺部品への引っ掛かりがないように配置しなければなりません。
場合によっては「現場でいい感じに施工してもらう」というように、現場施工者に任せることもあります。しかし、可動部が動作したときのケーブルの挙動が問題ないかは、その施工者の腕、勘や経験に大きく依存しますし、その場では問題なくても長時間動作させる中で問題が起こる可能性もあり得ます。
もし、不具合が起これば機械の稼働が停止し、工場に機会損失を与えてしまいますので、これを良しとする人はまずいません(ちなみに、筆者は過去に「設備稼働中にエアチューブが損傷した!」と夜中に現場から呼び出され、叱責(しっせき)されたことがあります)。
配管や配線は想像以上にデリケートです。可動部が動く際のケーブルのちょっとした挙動によって、部品の角やバリに擦れたり、厳しい曲げ半径の部分ができたりするだけで、かなり短時間で破損してしまいます。信号線などはケーブルに負荷がかかるとノイズの原因にもなります。
さらに、実際に配管/配線を施工してみると取り回しが想像以上に難しいです。特に、カメラのケーブルや動力用ケーブルはケーブルが太いため、曲げ半径をR100以上取らなければならないこともありますし、コネクター付近ではそもそも曲げることができません。そのため、想像以上に配管/配線の取り回しにスペースが取られることも珍しくありません。
直動運動の場合であれば、可動部への配管/配線に「ケーブルキャリア」というケーブルを保護する部品を用いて、その中に配管や配線を通すようにします。しかし、ケーブルキャリアは容積分だけ配管/配線を詰め込めるわけではなく、おおよそ容積の半分程度に抑えなければなりません(これはメーカーカタログにも記載されています)。場合によっては、アクチュエータ本体よりも大きいケーブルキャリアを使わなければならないこともあるので、それによってもスペースがかなり占有されます。
また、顧客によっては“追加ルール”として、「配管と配線とで、ケーブルキャリアの部屋を分けること」「ケーブルキャリアを垂直使用する場合は、摩耗粉の受けを設置すること」などの指定があり、さらにスペースが占有されます。
一方、旋回運動をする可動部への配管/配線は、ケーブルキャリアがスペース的に配置できないことも多いため、設計難易度が高くなる傾向にあります。
筆者の経験上、ほとんどの設計者は配管/配線ルートの検討を設計終盤で行っています(あるいは検討自体を忘れている場合も)が、個人的には構想設計の段階で、ある程度機構が確定したタイミングで検討を始めるのがよいと考えます。 (次回へ続く)
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
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