モノづくりの課題に対して、エンジニアリングチェーンマネジメント(ECM)とサプライチェーンマネジメント(SCM)の観点からアプローチしている。これは設計、製造や調達の連携とサプライチェーンのDX(デジタルトランスフォーメーション)化などからなる。
生産現場においては、2024年からリアルタイムの見える化に取り組んでいる。現場でバーコードなどを読み取る際に記録されるタイムスタンプを活用したリードタイムの削減だ。
「生産にはさまざまなデータが蓄積されている。それらを活用して、リードタイムやサイクルタイム、中間在庫などをリアルタイムに見える化することで、どこがボトルネックになっているのか把握し、リードタイム削減などに向けた取り組みを進める」(粟澤氏)
より需要と連動した生産計画の立案も加速させている。従来は自動車メーカーからの内示情報を基に15日先の1週間分の生産計画を立てていた。ただ、その間に需要変動が起こると計画の変更ができず、完成品在庫を過剰に抱えるリスクがあった。
そこで、2023年から導入したのが、後補充生産方式だ。完成品倉庫の販売実績を基に、毎日、8日先の1日分の生産計画を確定させる。それによって、急な減産などに対しても生産調整が可能になった。小ロットの機種では生産性を落とす可能性もあり、効果が大きい機種から取り組んでいる。
「仕組みのIT化などのカイゼンを積み重ねてできるようになった。自動車メーカーから見ると、これまで注文から生産開始まで15日かかっていたのが、材料在庫次第では8日前の注文でも生産可能になるなどのメリットが生まれた」(粟澤氏)
付加価値を生まない非正味作業の削減も進めている。例えば、工程への材料の搬送にはAGV(無人搬送車)を活用。21台のAGVが34コース、1カ月当たり8500便の搬送を行い、省人化に大きく貢献している。その他にも、自動車メーカーと連携して、からくりの習得や現場の困りごとの相談などを行っている。
開発、生産リードタイムの短縮を目指して、2023年から商品設計と工程設計のシミュレーション活用にも取り組んでいる。製品や工程の設計において、事前にデジタル空間上でシミュレーションを行うことで、設計、開発、生産など複数プロセスを同時に進めるコンカレント開発の実現が目的だ。
「試作品などを待ってから工程設計していては手戻りが発生してしまう。金型を発注したら設計はもう変えられない。コンカレント開発実現に向けてシミュレーションシステムの開発を行っている」(粟澤氏)
オフィスにはスタッフの誰もが入れるガラス張りの大部屋を設置して、さまざまな情報を集約して状況に応じた意思決定を図っている。
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