続いて、男性労働者にフォーカスして年齢階層別の推移を見てみましょう。実は、少子高齢化が進みつつも、団塊の世代、団塊ジュニア世代というボリューム層の移動もあるため、単調な推移になっていないことがよく分かると思います。
図2は年齢階層別に見た男性就業者数の推移です。各年齢階層に2つの山があるのが見て取れますね。これが団塊の世代(主に1947〜1949年生まれ)と団塊ジュニア世代(主に1971〜1974年生まれ)です。例えば25〜34歳(緑)の年齢階層を見てみると、1970年代半ばに1つの山があります。
そして2000年代初頭に現れるもう1つの山が団塊ジュニア世代です。団塊の世代は、1980年代半ばに35〜44歳(青)の年齢階層で山を形成し、1990年代半ばで45〜55歳(橙)の年齢層で山を形成し……、と年月の経過とともにシフトしている様子が分かるのではないでしょうか。そして2023年にはすでに65歳以上の年齢階層に含まれていることになります。
もう1つのボリューム層である団塊ジュニア世代は、2023年では45〜54歳の年齢階層に含まれ、それが徐々に55〜64歳の年齢階層に移行し始めている様子が分かりますね。すでに団塊ジュニア世代は働き盛りの世代から、高齢世代へと移り始めていることになります。
団塊ジュニア世代よりも下の世代を見てみると、例えば25〜34歳の年齢階層では、減少傾向が進んでいます。1970年代から、団塊の世代、団塊ジュニア世代が移動しながらも、ボリュームのある層を形成してきたことが分かります。
一方で、15〜24歳の年齢階層では近年減少傾向が下げ止まっています。就業率の向上や、団塊ジュニア世代の子ども世代が、他の世代よりもやや多いといった特徴があるのかもしれません。大変興味深い傾向です。
続いて女性の就業者数の変化も眺めてみましょう。男性とは少し違った傾向があるかもしれません。
図3を見ると、図2の男性のグラフと傾向は似ていますが、全体的にやや増加傾向が強まっていることが分かります。65歳以上の高齢世代も大きく増えていますが、15〜24歳の年齢階層以外のどの年齢階層でも、団塊の世代よりも団塊ジュニア世代の方が就業者数が多くなっています。
こうした世代の移動がありつつも、年々働く人の割合は増えています。つまり、これまでは専業主婦などで仕事を持っていなかった人が、仕事を持つようになっているということですね。この傾向は、共働き世帯が増えていることとも符合します。
最後に男性、女性で年齢階層ごとの変化を整理してみましょう。
図4が男女別に1997年と2023年の年齢階層別労働者数の変化を表したものです。男性から見てみると、34歳未満の若年層が1257万人から881万人と400万人近くも減っていますが、65歳以上の高齢層が293万人から534万人と200万人以上増えています。
35〜64歳の働き盛りの世代は2343万人から2282万人でそこまで減っているわけではありません。団塊の世代、団塊ジュニア世代が移動しながら、働き盛りの年齢階層でボリュームのある層が一定数確保されてきたことがうかがえます。
女性の方を見ると、34歳未満の若年層は898万人から797万人と100万人減で確かに減っていますが、男性ほどではありません。65歳以上の高齢世代は176万人から380万人とやはり200万人ほど増えていて、若年世代の減少以上に高齢世代が増えていることになります。35〜64歳の年齢階層では、1591万人から1875万人と300万人近くも増加しています。
女性の場合は、高齢世代だけでなく、現役世代でも大きく就業者が増加してきていますね。確かにその多くはパートタイム労働者となるわけですが、労働に参加する女性が大きく増加してきたのは事実のようです。
このように日本の労働市場では、少子高齢化が進みつつも、団塊世代/団塊ジュニア世代の移動が大きく影響していて、女性については就業率の向上も伴った変化が確認できます。
女性の現役世代の就業率はかなり高まっていますので、これ以上増えていくのは限界がある中で、今後は団塊ジュニア世代も高齢世代になっていきます。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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