心を整える掃除機を生むパナソニック八日市工場は技術力で再生材活用メイドインジャパンの現場力(2/4 ページ)

» 2024年11月05日 08時00分 公開
[長沢正博MONOist]

家電製品に環境配慮型材料を積極活用

 近年、力を入れているのが環境配慮型材料の積極的活用だ。パナソニックグループでは2030年までに自社の事業に伴うCO2排出量を実質ゼロにすることを目標にしている。

 2023年12月発売のセパレート型コードレススティック掃除機「MC-NS10KE」では、廃棄された家電製品からリサイクルした再生プラスチック材を、ごみを自動収集するクリーンドックに採用し、再生プラスチック使用率を製品全体の約40%にまで高めた。

 2024年2月に発売した紙パック式コードレススティック掃除機「MC-PB60J」のボディーには、リサイクルされたセルロース含有プラスチック(バイオマス材)と、リサイクルされたプラスチックを配合した再生材比率95%の樹脂を使用した。

 2024年10月発売のセパレート型コードレススティック掃除機「MC-NX810KM」も再生材比率85%のABS樹脂をクリーンドックの外郭部品を中心に使用している。外郭は大型部品が多いため、積極的に再生材の使用を推進している。

 1kg分のABS樹脂を再生材に置き換えると、0.74kgのCO2が削減できる。MC-NX810KMでは1台当たり1.72kgの再生材を使用しており、仮に目標とする年間3万台を生産すると、1年間で約32t(トン)のCO2排出量の削減に貢献する。

2024年10月発売のセパレート型コードレススティック掃除機「MC-NX810KM」[クリックで拡大]出所:パナソニック くらしアプライアンス社

再生材の成形工程で起こる問題をいかに克服したか

 ただ、再生材を用いると製造現場では一般の材料と比べてさまざまな問題が生じる。

 1つ目は、再生材は成形中にガスが発生しやすい点だ。再生材はリサイクルの過程で水分や揮発性成分が残留しやすく、樹脂を金型に注入する過程でそれらの成分が高温にさらされてガスが発生し、金型内に滞留することがある。この滞留したガスは製品の表面に影響を与え、光沢がなくなったり、樹脂が焼けこげるガス焼けが発生したりする。

 そこで、作業者が定期的に金型や成形部品の状態を確認し、外観検査や金型清掃を実施するなど、定期的なメンテナンスを行いながら外観品質の維持を図っている。

部品を成形する射出成形機。材料は上部の配管を伝って自動供給される[クリックで拡大]

 2つ目は、成型時の樹脂の流れが異なる点だ。再生材は異なる原料や処理条件を経ているため、樹脂の流れにばらつきが生じ、成形時に均一な製品を作ることが難しくなる。それが製品の寸法精度や外観に問題を引き起こす要因となる。

 そこで、開発時にCAE解析を行い、樹脂の流れをシミュレーションして不良発生箇所を事前に特定して製品形状へ反映させる他、樹脂温度、樹脂を流すスピード、圧力を最適な条件に設定し、徹底した品質管理を行うことで再生材を使いこなし、環境に配慮した製品を作り上げている。

成形後の部品の取り出し、レーザー印字、搬送まで自動化されている[クリックで拡大]

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