岡本工作機械製作所は、シリコン(Si)と金属部の銅(Cu)を同時に研削する「Si貫通電極ウエハー全自動研削装置」を開発した。Si貫通電極をSiウエハー裏面から露出させることができ、歩留まり低下の要因となる電極の長さのばらつきを低減する。
科学技術振興機構(JST)は2024年10月29日、シリコン(Si)と金属部の銅(Cu)を同時に研削する「Si貫通電極ウエハー全自動研削装置」を、岡本工作機械製作所が開発したと発表した。Si貫通電極をSiウエハー裏面から露出させることができ、歩留まり低下の要因となる電極の長さのばらつきを低減する。
同装置は、産業技術総合研究所の研究成果をベースに、岡本工作機械製作所が開発を進めた。脆(ぜい)性材料のSiと延性材料のCuを緻密かつ安定的に同時研削する技術を搭載し、直径300mmのSiウエハーの裏面からSi貫通電極を露出させる。
気孔が多数あり、目詰まりしにくい研削砥石に加え、研削時に砥石へ付着したCuを取り除いて、砥石表面を同じ状態に維持できるように高圧水で洗浄する技術を開発。これらの技術により、研削能力の低下を抑えた研削が可能となった。
また、加工中に厚み測定器(IRセンサー)を活用し、形状をリアルタイムに測定しつつ研削ヘッド(砥石)の傾きを自動的に補正する方法を採用した。補正しない場合と同時間でSi貫通電極の長さのばらつきを最大限小さくし、高い平坦性を達成した。
SiとCuの同時研削で露出したSi貫通電極のCu面に対しては、無電解ニッケル−ボロン(Ni-B)めっきで表面保護処理を実施した後、Siウエットエッチングで処理した。CuがSi貫通電極部分から溶け出すのを防ぎつつ、Si上の残留Cuを一般的な金属濃度以下まで除去でき、品質低下の懸念を解消する。
開発した装置を用いて、Si貫通電極形成時のビアミドルプロセスの効率化に成功した。接続電極を使わない直接積層が可能になり、従来に比べてコスト低減と高い歩留まりが期待される。
なお、今回の装置は、JSTの研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)「NexTEP−Aタイプ」における開発課題「Si貫通電極ウェーハ全自動研削装置」の成功事例と認定された。同装置は、産業技術総合研究所 先端半導体研究センター 主任研究員の渡辺直也氏の研究成果を基に、JSTが支援し、2016年10月から2024年7月にかけて岡本工作機械製作所が実用化/開発を進めた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.