SiTime Japanは、シリコンMEMSベースの高精度タイミングデバイスの優位性を説明するとともに、AIデータセンターなどで用いられるアクセラレータカードやネットワークカードなどに最適なクロックジェネレータ製品ファミリー「Chorus」を発表した。
SiTime Japanは2024年5月13日、東京都内とオンラインで会見を開き、同社が展開するシリコンMEMSベースの高精度タイミングデバイスの優位性を説明するとともに、AI(人工知能)データセンターなどで用いられるアクセラレータカードやネットワークカードなどに最適なクロックジェネレータ製品ファミリー「Chorus(コーラス)」を発表した。水晶デバイスを用いる既存のクロック回路構成と比べて、10倍の耐久性、半分の設置面積、最大6週間の設計期間の短縮が可能とする。Chorusは一部の先行顧客向けにサンプル提供を開始しており、2024年下期から通常のサンプル出荷を始める方針だ。
さまざまなエレクトロニクス製品における時間管理や周波数同期に用いられているタイミングデバイスの市場は、振動子(Resonator)、発振器(Oscillator)、振動子や発信器に他の回路を集積したクロックICに分けることができる。米国SiTime マーケティング担当上級副社長のピユッシュ・セヴァリア(Piyush Sevalia)氏は「2024年のタイミングデバイスの市場規模は、振動子が約40億米ドル、発振器が約50億米ドル、クロックICが約10億米ドルで合計100億米ドルになる。このうち、当社製品が対象とし得る市場規模(SAM:獲得可能な最大市場規模)は2021年時点で10億米ドルだったが、2024年は全体の3割に当たる30億米ドルまで拡大した。これまでは発振器が事業の大半を占めていたが、今回発表するChorusによりクロックICの売上高を伸ばしていきたい」と語る。
2005年創業のSiTimeは、シリコンMEMSを用いるタイミングデバイスを業界に先駆けて手掛けてきたことで知られる。振動子や発振器は水晶を用いるデバイスが広く知られているが、既にシリコンMEMSベースのデバイスが性能面で大きく上回っているという。「2013年を境にシリコンMEMSは水晶を超えた。位相ノイズ、ジッタ、安定性、耐ショック、耐振動、サイズなどの性能、規模、リードタイム、品質、プログラムビリティなどのサプライチェーンに関わる側面でもシリコンMEMSが優位でありその差は今後拡大していく一方になるだろう」(セヴァリア氏)という。
SiTimeはこれまでにシリコンMEMSを用いるタイミングデバイスの研究開発に5億米ドルを投資している。特に、品質と信頼性では、生産100万個当たりで欠陥が出た数であるDPPMは、水晶を用いるタイミングデバイスが50であるのに対し同社は0.6と極めて低い。同社はファブレス企業だが、生産についてはシリコンMEMSチップはボッシュ(Robert Bosch)、アナログ回路チップはTSMC、パッケージの組み立てはASEやCarsemなどの大手OSAT(半導体組立・テスト受託サービス)から成る体制を確立している。
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