名古屋工業大学らは、熱電変換材料への元素添加による熱伝導低減のメカニズムをX線非弾性散乱で解明した。軽元素の添加による熱伝導率低減が可能となり、省資源で環境にやさしい材料設計が期待される。
名古屋工業大学は2024年10月11日、高輝度光科学研究センター(JASRI)との共同研究で、熱電変換材料への元素添加による熱伝導低減のメカニズムを解明したと発表した。廃熱を電気エネルギーに直接変換できる熱電変換技術は、エネルギー問題解決に向けたコア技術の1つとして注目されており、温度差を効果的に保持する熱電変換材料の高性能化が求められている。
研究グループは、さまざまな元素の添加により熱伝導が低減することが判明しているFe2VAl熱電変換材料を用い、Ta(タンタル)とTi(チタン)をそれぞれV(バナジウム)の位置に添加したときの熱伝導率の変化を調べた。振動で伝搬する熱伝導の低減には、周囲よりも重い元素の添加が有効と従来は考えられていたが、実際には母元素のVとほぼ同じ質量のTi添加でも熱伝導は低減する。
そこでX線非弾性散乱という手法を用い、Ta、Tiを添加したFe2VAl中の原子の振動状態を観測し、熱伝導低減のメカニズム解明を試みた。
その結果、Ti添加では材料内の原子をつなぐバネのような結合が軟らかくなることが判明。この結合は価電子が仲介しており、母元素のVと価電子の数が異なるTiの添加によりソフト化すると考えられる。一方、Vと同じ族で重いTaを添加した場合は、重い添加元素特有の振動モードが見られ、ソフト化は生じていないことが示唆された。
希少なものや毒性のあるものが多い重元素を使用せず、軽元素の添加による熱伝導率低減が可能となり、省資源で環境にやさしい材料設計が期待される。今後は他の元素を添加したFe2VAlや、別の材料系の元素添加効果の解析に取り組む予定だ。
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