名古屋工業大学らは、強誘電体の多層ペロブスカイトの合成に成功した。積木細工のようにペロブスカイト層を1層ずつ積み重ねて、多層構造のDJ型層状ペロブスカイトを合成し、新しい強誘電体を発見した。
名古屋工業大学は2024年9月3日、強誘電体の多層ペロブスカイトの合成に成功したと発表した。名古屋大学、大阪公立大学との共同研究による成果だ。
研究グループは、積木細工のようにペロブスカイト層を1層ずつ積み重ね、多層構造のDion−Jacobson(DJ)型層状ペロブスカイトを合成した。具体的には、ペロブスカイト層が3層の3層系強誘電体CsBi2(Ti2Nb)O10を出発物質に、1層系の単純ペロブスカイトであるSrTiO3を原子層制御法により積層し、4層系、5層系の層状ペロブスカイト(Cs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1;n=4,5)を合成した。
高角散乱環状暗視野走査透過型顕微鏡(HAADF-STEM)で構造を解析したところ、いずれもDJ型層状ペロブスカイト特有の積層構造を持つことを確認。単位格子のサイズは、(Ti,Nb)O6八面体1個分に当たる約0.4nmずつ増加していた。
強誘電特性(分極−電界特性)はいずれの層系も強誘電体で、室温下での比誘電率は層数で特性を制御できることが分かった。層数の増加に伴い、強誘電−常誘電相転移温度(キュリー温度TC)は低下する。また、層数が奇数の場合には従来型の変位型強誘電性(直接型強誘電性)に、偶数では新型の間接型強誘電性へと、発現機構が切り替わることも明らかとなった。
ペロブスカイト層を1層ずつ積み重ねる原子層制御法は、DJ型層状ペロブスカイトのみならず、他の層状ペロブスカイトなどにも適用可能だ。さまざまな元素の組み合わせにより、強誘電体の新材料開発、新機能探索への応用が期待される。
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