横浜国立大学は、ナノ構造を高度に制御した、リチウムマンガン酸化物材料の合成に成功した。コバルトやニッケルフリーの構成でありながら、同材料が高エネルギー密度の電池正極材料となることが分かった。
横浜国立大学は2024年8月23日、ナノ構造を高度に制御したリチウムマンガン酸化物材料(LiMnO2)の合成に成功したと発表した。コバルトやニッケルフリーの構成でありながら、同材料が高エネルギー密度の電池正極材料となることが分かった。名古屋工業大学、島根大学との共同研究による成果だ。
同大学が開発したLiMnO2は、鉄のように埋蔵量が多く、安価なマンガンを活用。コバルトやニッケルを使わずに、既存のニッケル系層状材料と同等の約800Whkg−1のエネルギー密度を達成した。従来の固相焼成法を用いて合成しており、低コストで大量に生産できる。
約10分で8割程度の再充電が可能で、ニッケル系材料とほぼ同レベルの急速充電特性を備える。電池材料としての実用性が高く、電気自動車の急速充電にも対応する。
さまざまなLiMnO2の結晶多形を合成し、結晶構造と充放電時の相変化挙動などを分析したところ、複合的ドメイン構造を有することが分かった。また、比表面積の大きい試料を合成すると、高い電極特性を持つ材料となることも判明した。
研究チームはこれまでに、高濃度のフッ素を含むリチウム過剰型マンガン系酸フッ化物(Li2MnO1.5F1.5)が、ニッケル系材料と同レベルの高いエネルギー密度を示すことを明らかにしている。今回開発したLiMnO2は、これに比べて合成手法が容易で、安いコストで量産できる。
加えて、マンガン系材料は炭素被覆が必要ないため、今後の研究の進捗により、鉄系材料を下回るコストで高エネルギー密度かつ普及価格帯のリチウムイオン蓄電池を実用化できる。これにより、電気自動車の低価格化と高性能な電気自動車の開発が期待される。
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