三菱ケミカルは、ケミカルリサイクルのサプライチェーンを想定したトレーサビリティーシステムの実証試験を行い、複数の企業にわたるサプライチェーンで、リサイクル原料となる廃プラスチックの種類などの情報を改ざん不可能としつつ適切に管理/共有できることを確認した。
三菱ケミカルグループの三菱ケミカル(MCC)は2024年10月24日、ケミカルリサイクルのサプライチェーンを想定したトレーサビリティーシステムの実証試験を行い、複数の企業にわたるサプライチェーンで、リサイクル原料となる廃プラスチックの種類などの情報を改ざん不可能としつつ適切に管理/共有できることを確認したと発表した。
三菱ケミカルは2023年度から、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」で、物質・材料研究機構(NIMS)が主導する「環境試験・診断・トレーサー技術の確立と産業応用のためのデジタル解析基盤の構築」プロジェクトに参加している。
同プロジェクトでは、各種評価技術の確立とこの技術で得られた情報を活用するデジタル基盤の構築を実施。これらにより、重要課題として欧州委員会が発表した「廃車(End-of-Life Vehicles、ELV)規則案」に対応するために、自動車部品で使用する高品質なプラスチック再生材を安定供給が可能なリサイクルシステムの構築に取り組んでいる。
今後は、これらのノウハウを家電など他分野へも展開することで相乗効果を図ることを狙っている。その一環で今回はブロックチェーンを用いて透明性と信頼性が高いサプライチェーンを構築するためのトレーサビリティーシステムの実証試験を行った。なお、このシステムは三菱ケミカルが事業化を目指しているアクリル樹脂ケミカルリサイクルのサプライチェーンでの利用を想定している。
同実証試験では、chaintopeが開発したブロックチェーン「Tapyrus(タピルス)」を使用して、同社と共同でトレーサビリティーシステムを構築した。ブロックチェーン技術を用いることで、ケミカルリサイクルとマスバランス方式を適用するサプライチェーンでも、ポストインダストリーやポストコンシューマー、ポストコンシューマーかつ自動車由来の廃プラスチックの種類を、透明性/信頼性を高めて改ざん不可能な状態で管理できることが分かった。
加えて、ブロックチェーン技術を用いることで、ケミカルリサイクルを含む複数企業にわたるサプライチェーンの中で情報を適切に管理/共有可能なことも確認した。
マスバランス方式とは、複数の原料(石油由来原料と廃プラスチック由来のリサイクル原料)を混合して製品を製造する際に、使用した特定の原料の割合を任意の製品へ割り当てる流通管理方式だ。
ポストインダストリーとは消費者が使用する前にリサイクルに回ることを指し、工場で発生する端材などが該当する。ポストコンシューマーは消費者が使用した後にリサイクルに回ることを指す。
昨今、リサイクル原料の来歴や品質確認の履歴など、製品や素材の環境配慮度を可視化して証明/共有することを求めるトレーサビリティーやデジタルプロダクトパスポート(DPP)のニーズが高まっている。
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