三菱電機は、家電リサイクルで回収したポリカーボネート系プラスチック(PC/ABS)を耐久性と難燃性を確保したプラスチックとして再生化することに成功し、ガス検針システムなどに活用が進められているセンサー用無線通信端末への採用を開始した。
三菱電機は2023年6月5日、家電リサイクルで回収したポリカーボネート系プラスチック(PC/ABS)を耐久性と難燃性を確保したプラスチックとして再生化することに成功し、ガス検針システムなどに活用が進められているセンサー用無線通信端末への採用を開始したと発表した。家電リサイクル由来の再生PC/ABSを製品に適用するのは同社初だという。
今回のリサイクル技術は、独自の配合処方の開発により、高い耐久性と難燃性を確保したプラスチックとして再生化に成功した他、回収/選別/配合の工程を最適化することで安定性を高めた。従来製法の再生PC/ABSと比べ、想定する使用環境での耐久性(強度寿命)を3.7倍に向上した。同社の評価によれば、難燃性に関して規格「UL94 V-0」を達成し、新規原料から製造したPC/ABSと同等の難燃性を実現している。
加えて、同社の家電リサイクル事業で回収されたPC/ABSを使用することで、サーキュラーエコノミーの実現に貢献するだけでなく、リサイクル材を国内で調達することにより、為替や国際情勢の影響を受けにくい持続的な供給体制を構築した。劣化度合いが混在する回収素材からでも、安定した品質を有する再生PC/ABSの生成を実現した。
また、従来部品と比較し、新規プラスチック使用量を70%削減し、PC/ABSを新規原料から製造する場合と比較してCO2排出率を57%カットした。
今後は、再生PC/ABSを適用する製品と部材を増やすとともに、高耐熱性を持った再生PC/ABSを開発し、需要が拡大する高速通信端末などの高温環境で使用される製品への適用を進めることで、社会課題である持続可能な生産消費形態の確保に役立つ。
家電リサイクル向けに回収されたプラスチックは、耐久性などの性能が劣化しており、その劣化の程度は回収品によってさまざまだ。一方、PC/ABSは使用される製品によって特性が異なり、回収されたPC/ABSには多様な種類が存在するため、安定した耐久性と難燃性を有する再生PC/ABSを生成することは困難だった。
こういった状況を踏まえて、三菱電機は2019年6月に「環境ビジョン 2050」を策定し、さまざまな環境課題の解決にむけて取り組んでいる。さらに、プラスチックの自己循環リサイクルを本格化し、家電製品などでリサイクルプラスチックの使用を進めている。しかし、長期間使用されるセンサー用無線通信端末に活用するPC/ABSでは、これまで同社が求める耐久性と難燃性を満足することができず、採用に至らなかった。
そこで、同社は、家電リサイクルで回収されたPC/ABSを、安定した品質で高い耐久性と難燃性を持つ再生PC/ABSへリサイクルする技術を開発した。これにより、センサー用無線通信端末の部材への採用が可能となり、当該部材の新規使用プラスチック量を約70%減らした。
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