金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第14回では、本連載の2つ目の本丸である「ねじ締結体」について取り上げる。
本連載の2つ目の本丸、「ねじ締結体」について取り上げます。まずは、いくつかの重要なポイントをおさらいしましょう。
図1に締結トルクと軸力を示します。ボルトの頭を回すとボルトには軸力が発生し、ボルトの頭はその軸力で上の板を押します。同時に下の板は軸力と同じ大きさの反対方向の力で上の板を押します。
ボルト締め付けトルクと軸力(初期締結力)の関係はJIS規格の式(参考文献[1])を使えば求まります。締結トルクと軸力の関係を以下に記します(式1)。
トルク係数は次式で表されます。
式2の導出については、連載「設計者向けCAEを使ったボルト締結部の設計」の中で説明しています。ボルトの締結トルクは、ボルトの強度によって変えます。高強度ボルトの締結トルクは高い値となります。ボルトねじ部の相当応力(この場合、ねじ山の応力集中を含まない公称応力です)が、材料の降伏応力の70〜90[%]程度の値となるようなトルクを締結トルクとして決めることが多いようです。被締結体に作用させることができる繰り返し荷重は、軸力が大きいほど大きくなります。つまり、締結トルクが大きいほど強度的に有利となり、締結トルクがゼロになると許容できる繰り返し荷重はかなり小さくなります。
図3にボルト締結体に繰り返し荷重Fが作用している状態を示します。ボルトの初期締結トルクがゼロのときのボルトねじ部に発生する応力は荷重÷断面積で、応力振幅σaはその半分ですね。次式で表されます。
ねじ部の断面は、図4に示したようにらせん溝が切られた軸の断面なので円形ではありません。ねじ有効径を直径とする円の面積より小さく、谷径を直径とする円の面積より大きいので、式5と式6が使われています。
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