MONOist SDVという言葉はバズワード的に用いられていることもあり、明確な定義が定まっていません。モビリティDX戦略ではSDVをどのように定義していますか。
吉本氏 モビリティDX戦略の中では、走ったり、曲がったり、止まったりといった制御ソフトウェアのアップデートができる自動車をSDVと定義している。制御ソフトウェアの全てではなく、一部でもアップデートできればそれはSDVだ。
MONOist また、モビリティDX戦略では「多様なSDVの形」という表現も多く見られます。この「多様なSDVの形」とは何を意味しているのでしょうか。
吉本氏 テスラ(Tesla)に代表されるような統合ECUをベースとするSDVだけではなくより広い概念で捉えるために「多様なSDVの形」が重要になると考えている。
また、パワートレインで見るとEV(電気自動車)=SDVという見方もあるが、内燃機関車やハイブリッド車などのパワートレインも含めてSDVの多様性として捉えている。日本政府としては、自動車に多様な選択肢を用意できるように取り組みを推進していきたいと考えている。日本だけでなく各国でそれぞれの状況に合わせてさまざまな形があるべきで、一つに絞るべきではない。
日本の自動車メーカーが持つパワートレインの多様性を強みとして生かしていくことも重要だ。日本政府からも2023年5月のG7広島サミットでカーボンニュートラルへの多角的なアプローチとなる「マルチパスウェイ」の方針を発信しており、世界各国への浸透に努めている。
MONOist モビリティDX戦略のSDV領域では、2030年と2035年時点でSDVのグローバル販売台数における「日系シェア3割」の実現を目標に設定しました。この目標はどのようにすれば実現できるのでしょうか。
吉本氏 現時点での世界の自動車販売台数における日本の自動車メーカーのシェア3割という数字が、この目標のベースになっている。つまり、今後自動車がSDVに移行して行っても同水準のシェアを取っていくということだ。
正直なところ2024年時点でSDVの日系シェアが3割を下回っていることは確かだろう。この状況から6年後の2030年時点で3割にすることはかなり挑戦的な目標になる。2025〜2026年にSDVに位置付けられる次世代自動車の市場投入が始まる中で、モビリティDX戦略の取り組みを複合的に推進していくことで達成したい。
目標達成に向けては、先ほど挙げたGX戦略の推進も重要な位置付けになる。当初のSDVはEVや高級車から適用されると見ているからだ。EVも2025〜2026年に次世代車両の市場投入が始まるが、そこから勝って行く必要があるだろう。
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