トヨタの知財含めた三位一体活動を支援、日立が特許情報分析サービスを提供知財ニュース

日立製作所は、同社の「特許情報分析サービス」をトヨタ自動車が採用し、2024年8月から運用を開始したと発表した。まずは知財部門、開発部門で利用を開始しており、今後は順次機能を拡大して利用部門を広げていく方針である。

» 2024年09月26日 07時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所(以下、日立)は2024年9月25日、同社の「特許情報分析サービス」をトヨタ自動車が採用し、同年8月から運用を開始したと発表した。まずは知財部門、開発部門で利用を開始しており、今後は順次機能を拡大して利用部門を広げていく方針である。

「特許情報分析サービス」の利用による効果イメージ 「特許情報分析サービス」の利用による効果イメージ[クリックで拡大] 出所:日立

 特許情報分析サービスは、特許文献についてキーワードや特許分類で検索した調査対象の集合データを取り込むと、その集合に対するさまざまな観点のグラフが自動生成されるとともに、グラフを読み解く際のヒントになるガイドの提示機能なども実装されいる。知的財産に関わる情報を分かりやすいグラフなどで可視化できるので、特許業務に関する専門スキルを持たない場合でも新たな気付きを得られるような分析を容易に行える。

 トヨタ自動車は2011年4月から、日立の特許情報提供サービス「Shareresearch」を利用している。新たに導入する特許情報分析サービスは、トヨタグループの研究/開発者のうち1万人が利用するShareresearchに蓄積してきた社内の特許調査データをシームレスに取り込むことが可能なため、分析実行までの時間の大幅な短縮や負荷を軽減できる。Shareresearchは、論文の被引用率の高さなどから導く「先行性」「他社注目度」「自社注力度」といった特許の価値指標を独自に定めており、これらの指標データを活用した分析や、グラフでの可視化も容易なため、業界全体や他社の動向を迅速に把握できる。運用に先立ち実施した試行では、知財部門における分析作業が短縮でき、分析作業の効率化により、特許の調査/分析の対応件数を増加できる見込みであることを確認したという。

 また、グラフとそのグラフに対してユーザーが入力したコメントをレポートとして出力可能であり、部門横断のプロジェクトにおける関係者間での情報共有や、経営施策や事業方針を検討する企画部門への説明などにも活用できる。例えば、知財部門で調査した競合他社の特許/技術動向などのグラフデータに対して、研究開発部門が気付き事項や新製品の開発方向性、今後検討すべきリスクなどをコメント欄に記載し、まとめてレポートとして出力することなども可能だ。知財情報を生かした価値創出を支援したり、タイムリーな業界/技術動向を生かした経営施策の立案や事業の推進を支援したりできる。

「特許情報分析サービス」の画面イメージ 「特許情報分析サービス」の画面イメージ[クリックで拡大] 出所:日立

 国内外での特許出願件数が約1万4000件、特許登録件数が約1万1000件(2022年の実績)などとともにトップクラスの実績を持つトヨタ自動車は、未来のモビリティ社会の実現に向け、ビジネスの次の一手を検討するために、「経営・研究開発・知財」の三位一体の活動を目指して経営施策と連動した知的財産活動を進めている。三位一体の活動のためには、知財部門といった知財の専門家をはじめとし、経営施策の立案や研究開発などに関わる人々も知財情報を活用していく必要がある。しかしこれまでは、知財部門の限られた人数で分析を行っており、研究開発部門の全ての分析要望には対応しきれないという課題があった。

 今回採用する特許情報分析サービスにより、トヨタ自動車におけるさらなる知財情報の活用を支援し、自社の強みを生かす研究開発や、タイムリーな技術動向のキャッチアップによる経営施策の立案/事業への貢献など、「経営・研究開発・知的財産」三位一体の活動推進を支援するとしている。

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