日本マイクロソフトは2022年3月31日、Azureを基盤とする知財DXプラットフォーム「Proof Chain of Evidence」をトヨタ自動車とスタートアップ企業のScalarが構築したと発表した。技術情報に対する証拠力を高め、知財係争訴訟への対応力を強化する。
日本マイクロソフトは2022年3月31日、Azureを基盤とする知財DXプラットフォーム「Proof Chain of Evidence」をトヨタ自動車とスタートアップ企業のScalarが構築したと発表した。技術情報に対する証拠力を高め、知財係争訴訟への対応力を強化する。
Proof Chain of Evidenceは、グローバルな証拠採用ルールに基づいた電子データの証拠を保全するプラットフォームだ。Azure上に構築し、トヨタ自動車とScalarが運用を開始した。Scalarが提供する分散型台帳ソフトウェア「Scalar DL」の改ざん検知機能を利用して、電子データの証拠保全を行う。
Proof Chain of Evidenceは、記録した電子データに対して「いつ存在していたのか」「どの順序で存在していたのか」「存在していた時点からこれまで改ざんされていないか」について、10年以上の期間があっても証明する。さらに、これらの情報を日本、中国、欧州、米国で裁判の証拠として提出できる形で保全する。
トヨタ自動車はProof Chain of Evidenceを活用して、発明に対する先使用権の証明のための電子データの保全に取り組み始めている。今後は、競争が求められる技術領域において、外部企業と共同開発を行う際に問題となる「複数の企業の知財が混ざってしまい、どちらの知財なのか分からなくなる状態」を回避するために利用していく。
コロナ禍で紙のデータから電子データへの意向が加速してきたが、電子データは複製や改ざんが比較的容易で、証拠として保全することが難しい。
社内システムに格納すると改ざんされていないことを第三者に証明するのは困難であり、電子公証の利用や、利益相反する相手と共有するなどの手段が必要だった。従来の方法では、電子データを加味の書面にして公正証書役場に持ち込み公証を取得するか、電子公証によってタイムスタンプを付与していた。
しかし、将来利用するかもしれない証拠を確実に保全するのには不向きだった。電子データを裁判の証拠として利用できるようにするには、知財係争訴訟の場合は特許の有効期限である20年を超えて保全する必要がある。電子署名の場合は有効期限が1〜3年、タイムスタンプの有効期限は10年なので、証拠保全のハードルとなっていた。大量の書面にタイムスタンプを付与したり、有効期限を迎える前にタイムスタンプを付与しなおすなどの対応も必要だった。さらに、日本国外に提出するには、追加で大使館の認証を取得するなどの手続きも求められる。
Proof Chain of Evidenceは、クラウド上のデータ保管サービスに保管された電子データの証拠を分散型台帳技術であるScalar DLに記録し、記録した順序や記録された内容の改ざん検知を行い、一連の証拠の連なりを証明する「証拠のチェーン」を形成する。
Scalar DL自体が改ざんされていないことを証明するため、一連の電子データの証拠を記録したレコードの連なりの終端のハッシュ値に対して、各国の裁判所が認めるトラストサービスを用いて、定期的にタイムスタンプを付与する。タイムスタンプが付与されると、タイムスタンプの証拠であるタイムスタンプ・トークンが生成され、Scalar DLに記録する。
大量の電子データに対する自動的な証拠保全と、タイムスタンプ・トークン自体の保全により、タイムスタンプの有効期限である10年を越える電子データの保全を実現した。
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