パイナップルの葉を高濃度で樹脂に複合したタンブラーを開発材料技術

パナソニック プロダクションエンジニアリングは、成形材料複合技術「kinari」を用いて、パイナップルの葉の残渣を高濃度で樹脂に複合し、成形加工する「新素材タンブラー」を共同開発した。

» 2024年09月09日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 パナソニック プロダクションエンジニアリング(PPE)は2024年9月6日、植物由来のセルロースファイバーを55%以上の高濃度で樹脂に混ぜ込む成形材料複合技術「kinari」を用いて、フードリボンが沖縄県で生産したパイナップルの葉の残渣を高濃度で樹脂に複合し、成形加工する「新素材タンブラー」を共同開発したと発表した。

材料製造と成形プロセスの技術を組み合わせ新素材タンブラーを共同開発

 パナソニックグループは、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を2022年に制定した。このビジョンに基づき、自社でのCO2排出量削減に加え、社会におけるCO2量削減への貢献の拡大と天然資源の消費を削減するサーキュラーエコノミー実現に向けた事業活動に取り組んでいる。

 その中の1つの取り組みとして、2015年から石油由来樹脂の使用量削減による環境負荷低減を目指し、天然由来のセルロースファイバーを活用した材料開発を進めてきた。2019年にはセルロースファイバーを55%以上樹脂に混ぜ込んだ成形材料「kinari55-PP」を、2021年にはセルロースファイバーを70%の高濃度で樹脂に混ぜ込んだ成形材料「kinari70」を、2022年にはバイオマス度90%以上で「kinari55-PP」と同等の強度を持つ成形材料「kinari90」を開発した。

 バイオマス度の高濃度化の取り組みと並行して、地域/自治体や企業と連携してさまざまな植物廃材を有効利用し価値化するために、成形材料複合技術であるkinariの活用も進めている。

 この取り組みの一環として、PPEとフードリボンは2023年からフードリボンが生産しているパイナップルの葉から繊維を取り出した後の残渣を原材料に、kinariを活用した製品の開発を推進している。この結果、kinariの材料製造と成形プロセスの技術を組み合わせ、自然由来のタンブラーを共同開発した。

成熟したパイナップルの葉から繊維を取り出した後の残渣 成熟したパイナップルの葉から繊維を取り出した後の残渣[クリックで拡大] 出所:パナソニック プロダクションエンジニアリング
「新素材タンブラー」 「新素材タンブラー」[クリックで拡大] 出所:パナソニック プロダクションエンジニアリング

 このタンブラーは、パイナップルの葉から繊維を抽出した残渣を含有し、51%以上のバイオマス度を実現している他、紙製のフタに適した形状で成形されており、ドリンクの持ち運びにも対応している。さらに、kinariの特徴である着色性の良さを活用し、高級感のある黒色でデザインされている。このタンブラーはフードリボンの各種イベントや店舗で販売される予定だ。

 PPEはこの取り組みを通じ、沖縄県産のパイナップル葉残渣を製品に展開することで、石油由来の樹脂使用量を削減する。併せて、環境負荷が少ないだけでなく機能性とデザイン性に優れた製品として市場展開し、沖縄県のプラスチックごみ削減と環境イメージ向上に貢献する。

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