本連載では、あらためて中小製造業がIoT導入を進められるように、成功事例を基に実践的な手順を紹介していく。第2回のテーマは「IoT導入成功に向けた進め方」だ。経営者が何をすべきかを中心に解説する。
連載第1回となる前回は、国内中小製造業のIoT(モノのインターネット)導入の促進に向けた本連載の狙いと全体構成について説明しました。
今回のテーマは「IoT導入成功に向けた進め方」です。そこで、IoT導入の成功とは何かという定義を最初にしておきたいと思います。筆者は、以下の3つの目的が達成されることが大切だと考えています。
以降はこれら3つの目的について解説していきます。
⇒連載「あらためて取り組む中小製造業のIoT活用」バックナンバー
これまでのIoTによる現場改善活動でよく出てくるのが、IoTでデータが自動で収集され見える化されても、現場担当者に改善意識が定着しないという話です。毎日、何を何個作ったか、何個不良を出したかを記録することにより、担当者が現場の状況に詳しくなって改善意識が高くなり、実際に改善を実施することで現場力が向上するという期待があるわけです。
この考え方には一理あります。しかし、期待をかける側である国内中小製造業の経営者のほとんどは、先代から自社を引き継いでいる2代目もしくは3代目であり、一から会社を築いたわけではないので現場に詳しくないことを考慮する必要があります。
だからこそ最初に必要なのは、経営者が現場の問題を認識できるようにすることです。IoTで情報収集を行うとリアルタイムに現場の状況が見える化できます。そうすれば異常な箇所が、いつどの工程で起こっているのかを把握できます。
そしてこの内容について、経営者が自ら現場に行って、現場担当者に確認するのです。そうすれば、現場担当者はなぜ問題が起こっているのかを隠すことは意外となく、明確に説明してくれます。このように、経営者が現場側の管理者を巻き込んで現場担当者と一緒に取り組むことで確実に問題は解決されます。小さな成功体験が現場のモチベーションを高めるのです。
このときハードルになりがちなのが、従来のやり方を変えられないベテランの中堅社員層になります。この方たちは意外とIoTの活用方法を理解していませんし、新たに学ぶ場合も若手社員より理解に時間がかかります。IoT化を推進してしまうと、若手社員が実力を付けてしまって中堅社員が取り残されるのではないかとの不安から、どうしても従来のやり方を守りIoT化にネガティブになる傾向にあります。
しかしながら、ベテラン社員は最新技術への適応能力が低くても、過去の経験からイレギュラーな事態への対応力は長けています。この点を経営者がうまくくみ取って定常業務の推進は若手社員主導で進めて、ベテラン社員にはイレギュラー対応や若手社員の問題解決の支援を中心に対応させるようにすれば組織をうまく活性化させることができます。
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