本事業で目指すような生産システム実現のカギとなるのは、無線通信技術です。
従来の有線ネットワークでは、設備の再配置や生産ラインの変更、AGVの走行に制約がありましたが、無線通信を活用することでこれらの制約を克服し、製造プロセス全体の柔軟性を高めることが可能です。
また、工場内のさまざまな場所で無線通信を使用したセンサーやIoT(モノのインターネット)デバイスを用いてリアルタイムなデータ収集や解析が行えるようになり、工場全体の制御や稼働状況の把握、製品検査の自動化が進むことで、生産プロセスの最適化が実現されます。
なお、無線通信の方式や技術も進展しており、特に6GHz帯Wi-Fiや5G/ローカル5Gの登場により、導入者は、従来に比べてより幅広い選択肢を持つことができるようにもなってきています。
しかしながら、事業を進める中で、無線通信技術の導入に伴うさまざまな課題が明らかになりました。
製造現場には、棚やクレーン、工作物、在庫など、無線通信の障害となり得る物理的な要素が数多く存在する上、品種や生産量に応じて工場ごとに規模や生産ラインの配置が異なるなど、無線通信にとっては特殊な環境となっています。
なお、無線通信は有線とは異なり目に見えないため、視覚的に理解することが難しいという特性もあります。
このような特殊な環境下の製造現場で新たな無線機器を導入する際、担当者は無線の電波伝搬特性をよく理解し、自社の製造現場の環境やユースケースに応じた最適な通信設備を選定し配置する必要があります。
また、無線機器ベンダーと連携し、導入前に十分なテストを行い、無線通信が現場の環境や要件に適合することを確認することが重要です。これらの知識や準備が不足している場合、最新の大容量、低遅延な無線機器を導入してもその性能を十分に引き出せないばかりか、最悪の場合は運用中に無線通信でトラブルが発生し、製造現場全体の稼働に支障を来すリスクがあります。
しかし、こうした製造現場への無線通信技術の導入における情報や資料は十分ではありません。NEDOではこのような状況を踏まえ、2023年度に製造現場での無線通信技術の本格的な活用に向けた課題を体系的に整理し、製造現場での無線通信技術の導入や運用に関する留意点をとりまとめた「製造現場における無線通信技術の導入ガイドライン」を公開しました。
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