実証実験には、年齢で20〜50代の8人が参加して4カ月ほど行われた。この組み立てラインには4つの工程があり、各工程にはタクトタイムが設けられている。タクトタイムやその日の目標生産台数に沿ってどれだけ作業できたかによってポイントを付与し、アバターのグレードアップを行ってもらった。その後、アンケートを実施したところ、ゲーミング要素がモチベーションの向上につながったり、成果の可視化が達成感の獲得に貢献したりすることが確認できたという。
「生産管理システムがあっても、他の作業者と比べて自分の作業が早いのか遅いのか、というのは、作業者にフィードバックされていなかった。それらをゲームの要素を交えて見せてあげることで、お互いのコミュニケーションが生まれ、自らのスキル向上が可視化されていく点で効果が大きかったと捉えている」(岡根氏)
ただ、実証実験では課題も指摘されており、アバターのグレードアップではモチベーション向上の継続には限界があることも分かった。「ゲーム性の追求にも限りがある。物理的なものが欲しいという声もあり、ためたポイントで社内で使える商品券が得られるなど、今後は“ポイ活”のような仕組みも検討している」(岡根氏)。
Fun Factoryのアイデアは、三菱電機が大手企業の新規事業担当者やスタートアップ企業を招いて2024年6月に開いたリバースピッチイベントで紹介されている。リバースピッチとは、企業が自社の技術やアセット、課題などを公開し、それらを用いたソリューションの提案や課題解決のアイデアなどを募る手法だ。当日は約70社120人が参加した。「何十社と声をかけていただき、その中の1社と社外PoC(概念実証)に向けて打ち合わせをしている」(岡根氏)。建設業など製造業以外の企業からも関心が示されたという。
もともとは人に優しいFunな工場をテーマとしたソリューション開発を目指していて、その中で出会った愛知県のスタートアップ企業であるトランスミットとともに開発を進めている。製造工程のデータの取得に関して、まだ自動的に集められるシステムがない企業に対しては、トランスミットとともに仕組みの構築から行っていくことも検討している。
現在、PoCを行う外部企業に加え、モチベーションを客観的/定量的に評価する方法や技術を持った共創先や、作業者の“Fun”を生み出すコンテンツを創出する共創先も探している。実際の事業化は2025年の見込みだ。
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