なお、500kWの容量を持つマルチポートEVチャージャは「マルチポート」「大容量」「V2X対応」という3つの特徴を備えており、今後のEV化社会に対応するさまざまな機能を有している。
「マルチポート」では、最大20台同時充電に加えて、土浦事業所でも利用している4口のマルチコネクター充電スタンドを組み合わせれば最大80台の同時接続が可能だ。この最大80台の同時接続は、各EVの充電状態に合わせて容量25kWの急速充電を適宜切り替えて行うことになる。
「大容量」では、トラックやバスなど大型EVへの急速充電にも対応できるようになっている。容量25kWを1つの単位として、50kW×10台や、250kW×2台といった形で束ね併せることでフレキシブルに大容量に対応する。そして「V2X対応」によって、EVに充電するだけでなく、EVのバッテリーを蓄電池に見立てて充放電マネジメントを行うことで、電力需給のインバランスの調整やピークシフト、ピークカットなどにも活用できる。
また、マルチポートEVチャージャのDC-DCユニットは変換効率が高いだけでなく、海外では既に利用が始まっている電圧800V以上のバッテリーにも対応可能なように設計されている。「将来的な要件を見据えてハードウェアの性能を確保しているからこそ、長期にわたってソフトウェアデファインドによる機能拡張が可能になる」(日立インダストリアルプロダクツ 経営戦略本部 事業戦略第一部の五味玲氏)。マルチポートEVチャージャがソフトウェアデファインドであるからこそ、一般的な系統充電にとどまらない、WEPのようなソリューションにフレキシブルに適用できるというわけだ。
なお、土浦事業所でのWEPの導入効果は、マイカー通勤者1人の内燃機関車を通勤用EVに置き換えることでCO2排出量を年間1トン、燃料代金として支払っている通勤手当を約80%削減できると試算している。同事業所では324人がマイカー通勤をしており、全員がWEPによる通勤用EVに切り替えた場合、通勤CO2排出量は年間370トン、通勤手当は年間約3000万円を削減できる見込みだ。「CO2排出削減で370トンは大したことがないという意見もあるが、GHG(温室効果ガス)プロトコルのスコープ3/カテゴリー7に当たるものを定量的に削減できることには大きな意味があると考えている。また、従業員が利用しない土日は周辺地域で利用できるように公開するなど、WEPの導入には高い社会/環境価値があると考えており、その定量化も検討している」(五味氏)という。
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