カーボンニュートラルへの挑戦

建機の脱炭素は電池駆動だけじゃない、燃料電池や有線電動に加え代替燃料もCSPI-EXPO 2024レポート(1/3 ページ)

「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」において、カーボンニュートラルに対応する建設機械が多数展示された。大容量のリチウムイオン電池を搭載するフル電動建機だけでなく、燃料電池や有線電動、代替燃料などの提案も行われていた。

» 2024年05月23日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 2024年5月22〜24日の3日間、建設業界/測量業界の最新かつ最先端の機械、設備、技術、サービスが一堂に集まる展示会「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」が幕張メッセで開催されている。

 CSPI-EXPOにおける大きなテーマの一つになっているのがカーボンニュートラル対応である。建設機械は、自動車と比べてはるかに大きく重い上に、作業で重量物を取り扱うことをもあり、全てを電動化することは不向きとされてきた。しかし、国土交通省がカーボンニュートラルに貢献する建機の導入促進を進めるべく2023年10月に開始した「GX建設機械認定制度」により、建機メーカー各社の開発に向けた取り組みが加速している。

 今回のCSPI-EXPO 2024では、大容量のリチウムイオン電池を搭載するフル電動建機が多数公開された。また、燃料電池や有線電動といった異なる方式に加え、既存のディーゼル建機における代替燃料の活用などの提案も行われていた。

ボルボ建機が20トンクラスのフル電動ショベルをお披露目

 ボルボ・グループ・ジャパンは、CSPI-EXPO 2024の展示ブース内で会見を開き、ボルボ建機の20トンクラスのフル電動油圧ショベル「EC230 Electric」を披露した。同社は、前回の「CSPI-EXPO 2023」において、小型のフル電動建機2種を日本市場に投入しており、EC230 Electricは3モデル目となる。また、4モデル目となるフル電動コンパクター「DD40 Electric」も実証試験が完了次第、日本市場に投入することも明らかにした。

ボルボ建機の20トンクラスのフル電動油圧ショベル「EC230 Electric」 ボルボ建機の20トンクラスのフル電動油圧ショベル「EC230 Electric」。納入先である西尾レントオール向けのキー贈呈式も行われた。左から2番目にいるのが、ボルボ建機のアム・ムラリドハラン氏[クリックで拡大]

 EC230 Electricは、同じ20トンクラスのディーゼル建機と同等の性能を備えており、モーターのピークパワーは160kWとなっている。バッテリー容量は264kWhで最長稼働時間は5時間。欧州の急速充電規格CCS2に対応する充電器を用いれば、1時間半で容量の80%までの充電が可能だ。

 一方、DD40 Electricはディーゼル建機と比べて30%の出力向上を実現しており、モーターのピークパワーは42kW。バッテリー容量は67kWhで最長稼働時間は6時間。こちらは中国の急速充電規格であるGB/Tに対応する充電器により、1時間以内に容量の80%までの充電が完了する。

フル電動コンパクター「DD40 Electric」 フル電動コンパクター「DD40 Electric」[クリックで拡大]

 2023年に投入したフル電動のホイールローダー「L25 Electric」と小型油圧ショベル「ECR25 Electric」はこれまでに10台ずつ、合計20台を販売している。EC230 Electricも、会見にゲストおして登壇した西尾レントオールの2台を含めて5台の導入が決定している。

 ボルボ建機(Volvo CE) Head of Productivity & Retail Devt Asiaのアム・ムラリドハラン(AM Muralidharan)氏は「当社は業界で最も幅広い電動建機をラインアップしており、2030年までに全製品の35%を電動化する目標を掲げている。電動建機はCO2排出がゼロであるだけでなく、高効率かつ低騒音で振動が小さいなどさまざまなメリットがある。日本では建機の電動化需要が大きく拡大しており、当社は今後もフル電動建機の展開を拡大するとともに、電池駆動だけにとどまらず、ハイブリッドや燃料電池、有線接続などさまざまな技術開発も進める」と語る。

コマツは4台のフル電動油圧ショベルを展示

 フル電動建機の展示は国内大手建機メーカーも力を入れていた。国内最大手のコマツは、電動マイクロショベル「PC05E-1」から、3トンクラスの「PC30E-6」、13トンクラスの「PC138E-11」、20トンクラスの「PC200LCE-11」など4台のフル電動油圧ショベルを展示した。

 これらのフル電動油圧ショベルは2023年に市場投入したばかり。PC05E-1は、ホンダと共同開発しており、電動二輪車向けのリチウムイオン電池パック「Honda Mobile Power Pack e:」によって駆動する。2個の電池パックを搭載できるため、動作を続けながら電池交換することで継続して運用することもできる。電池容量は1.3kWh×2の2.6kWhで、連続稼働時間は2時間だ。

コマツの「PC05E-1」 コマツの「PC05E-1」[クリックで拡大]

 PC05E-1と併せて一般販売されているPC30E-6は、バッテリー容量が35kWhで稼働時間は3時間だ。定置式急速充電器との組み合わせで提供されており、充電時間は20%→100%で1.8時間となっている。

コマツの「PC30E-6」 コマツの「PC30E-6」[クリックで拡大]

 より大型のPC138E-11とPC200LCE-11は、国内ではレンタルで販売されている。それぞれバッテリー容量は225kWh、451kWhとなっている。「現場で求められる8時間の連続稼働が可能になっており、充電は専用の急速充電器を使って夜間に行うイメージだ」(コマツの説明員)という。

コマツの「PC138E-11」 コマツの「PC138E-11」[クリックで拡大]
コマツの「PC200LCE-11」 コマツの「PC200LCE-11」[クリックで拡大]

 なお、これら4台のフル電動ショベルは2023年12月に、国交省によるGX建設機械認定制度の初回認定を取得している。

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