紙面が余りましたので、破壊力学を使ってすみ肉溶接の強度評価をしてみましょう。あらすじは以下です。
図13に、すみ肉溶接を示します。ひっついていない部分があるので、これを「き裂」として捉えることができます。角Rがゼロの応力集中係数は無限大だったので、き裂先端の応力は無限大となります。
応力拡大係数Kを簡単に説明します。応力集中係数αと混同しないことに注意が必要です。無限に大きな2次元的な板に長さ2aのき裂がある状態を図14に示します。板の上下方向の遠い所に均一な応力σが作用しているとします。Y方向応力は式31で表されます(参考文献[1]〜[4])。
上式を級数展開すると式32になります。
r≪aでは、上式の第1項が他の項と比べて圧倒的に大きくなるため、第2項以降を無視することにすると、σyは式33となります。
上式を変形します。
今、K=σ√πaとしました。このKが応力拡大係数で、単位はMPa√mです。き裂には図15に示す3つのモードがあります。
最初はモードIIであっても、き裂はモードIになるように進行方向を変えるとのことなので、モードIについて述べます。図16に、き裂近傍の応力を示します。応力は次式で求められます。
き裂にはいろいろな形状のものがあるのですが、その応力分布は式35〜37と同じ形です。異なるのは応力拡大係数だけです。これを「破壊力学における相似則」といいます。いろいろな形状の応力拡大係数は式39で表され、係数Fは形状により決まります。係数Fは参考文献[1]〜[4]から見つけられます。
応力拡大係数は、「き裂先端の応力は無限大であるが、荷重が大きいとそれに比例して大きくなるので、無限大の前に付ける比例定数のようなもの」と解釈しております。
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