高い容量とエネルギー密度の薄型フレキシブル電池、体と環境にやさしい電解液材料技術

マクセルは、「TECHNO-FRONTIER2024」で、開発中の薄型フレキシブル電池「Air Patch Battery(AP)」と「Air Patch Battery II(APII)」について紹介した。

» 2024年08月01日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 マクセルは、「TECHNO-FRONTIER2024」(2024年7月24〜26日、東京ビッグサイト)内の「第6回 “つながる工場”推進展」に出展し、開発中の薄型フレキシブル電池「Air Patch Battery(AP)」と「Air Patch Battery II(APII)」について紹介した。

製品の仕様は固まりつつあり試作ラインも構築中

 APは、シート状の空気亜鉛電池で、寸法や標準容量、エネルギー密度が異なる「AP071520」「AP092530」「AP095055」といった3つの製品をラインアップする。AP071520は、寸法が15×25×0.75mm、標準容量が10mAh、エネルギー密度は53Wh/L。AP092530は、寸法が25×30×0.95mm、標準容量が40mAh、エネルギー密度は67Wh/L。AP095055は、寸法が50×55×0.95mm、標準容量が250mAh、エネルギー密度は114Wh/L。いずれも標準電圧は1.2Vだ。

 マクセルの説明員は「APは小型の割に標準容量やエネルギー密度は高いが、正極の表面に多数の穴が開いており、電池を使わなくても空気に触れた段階から劣化がスタートし、1〜2週間程度で使えなくなる。そのため、長期間の利用を目的としているユーザーには半年〜1年ほど使えるAPIIが適している」と話す。

上段は左から「AP071520」「AP092530」「AP095055」。下段は左から「APII052530」「APII082530」「APII085055」 上段は左から「AP071520」「AP092530」「AP095055」。下段は左から「APII052530」「APII082530」「APII085055」[クリックで拡大]

 APIIは、シート状のマンガン亜鉛電池で、寸法や標準容量、エネルギー密度が異なる「APII052530」「APII082530」「APII112530」「APII085055」「APII115055」といった5つの電池をラインアップする。「当社の調べによれば、APIIは、一般的な水溶液系電解液を用いたシート状のマンガン亜鉛電池と比べ、2〜5倍以上の容量とエネルギー密度を実現している」(マクセルの説明員)。

 APII052530は、寸法が25×30×0.55mm、標準容量は5mAh、エネルギー密度は18Wh/L。APII082530は、寸法が25×30×0.8mm、標準容量は18mAh、エネルギー密度は45Wh/L。APII112530は、寸法が25×30×1.1mm、標準容量は36mAh、エネルギー密度は65Wh/L。APII085055は、寸法が50×55×0.8mm、標準容量は150mAh、エネルギー密度は102Wh/L。APII115055は、寸法が50×55×1.1mm、標準容量は300mAh、エネルギー密度は149Wh/L。いずれも標準電圧は1.5v。

APとAPIIの仕様 APとAPIIの仕様[クリックで拡大] 出所:マクセル

 「一般的に電池の電解液には有機化合物が入っており、液漏れすると危険だ。一方、APとAPIIの電解液は、水銀、鉛、カドミウム、リチウム、強アルカリ、有機溶剤を不使用で、環境に優しく体に付着しても健康を害さない。さらに、軽量/薄型でフレキシブルな構造のため薄型機器や湾曲部に取り付けられる。使い捨てにも対応している。両製品ともに製品としての仕様は固まりつつあり、試作ラインも構築中だ。そのため、採用したいアーリーアダプターが登場すれば製品化/量産化に向けて進むだろう」(マクセルの説明員)

 用途としては、体温などを計測するメディカルセンシングパッチや経皮投薬パッチ、物品管理タグ、温度データロガー、IoT(モノのインターネット)、ウェアラブル機器での利用を想定している。

APとAPIIの用途 APとAPIIの用途[クリックで拡大] 出所:マクセル

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