富士通はエンタープライズ向けのAIを提供するCohereと戦略的パートナーシップを締結することを発表した。
富士通は2024年7月16日、エンタープライズ向けのAI(人工知能)を提供するCohereと戦略的パートナーシップを締結することを発表した。両社は2024年9月までに共同開発した日本語特化型の大規模言語モデル「Takane」(仮称)の提供開始を目指す。
Cohereはカナダのオンタリオ州に本社を置くAIスタートアップで、大企業に特化したLLMの提供実績や、RAG(Retrieval Augmented Generation)実現のための「Rerank」という技術やデータをベクトル表現に変換するEmbed技術に強みを持っている。CohereのCEOであるAidan Gomez氏は、現在のLLMのコア構成技術として知られる「Transformer」の開発者の1人でもある。
富士通は自社の事業、技術的な強みを生かすため、汎用的な大規模モデルよりも中小規模で企業向けの特化型モデルの提供に注力するとしている。同社は企業が特化型モデルを扱う上で生じる課題として、「自社が持つ多様で大量なデータが扱えない」「業務ノウハウやプロセスに合わせた生成AIモデルを素早く作れない」「社内規則や法令に準拠させられない」という3つがあるとしている。Cohereとのパートナーシップ締結を通じて、これらの課題解決に向けた取り組みを進める。
エンタープライズモデル向けのLLMでは、コンピューティングリソースをいかに抑えて高い精度、性能を出すかということがポイントになる。企業に特化型モデルを出していく中で、今後はこうしたところでも価値を提供していく。と語った。
さらに両社は、業種に特化した日本語LLMであるTakaneを共同開発中だ。Cohereの多言語対応LLMである「Command R+」をベースに、企業向けにRAGの性能を引き出しやすいLLMとして開発する予定。富士通の追加学習技術やファインチューニング技術を用いることで、日本語LLMとして富士通のAI基盤「Fujitsu Kozuchi」上で提供する。
また、2024年8月からはユーザーのクエリに応じてAIモデルを自動生成する「生成AI混合技術」を提供開始する予定だが、そこではTakaneや他のAIモデルを組み合わせた形で特化型生成AIを構築できるようにする予定だ。
金融や官公庁の他、R&D部門向けに、プライベートでセキュアな環境下で動作するサービスとして提供する。詳細なパラメータ数は明かしていないが、富士通が東京工業大学や理化学研究所などと開発した「Fugaku-LLM」(130億パラメーター)よりも大規模なものになる可能性もある。
富士通 執行役員副社長 CTO CPOのヴィヴェック・マハジャン氏は、今回の発表について「エンタープライズ向けの生成AIでは、省コンピューティングリソースで高精度、高性能を実現する必要があり、コンシューマー向けのものとニーズは異なる。(Cohereの力は)私たちの顧客ニーズと完全に合っていると判断した」と説明した。なお、金額は非公開だが、Cohereへの投資も実施するとしている。
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