富士通は2024年2月14日、富士通のAI基盤である「Fujitsu Kozuchi」や生成AIの研究開発に関する同社のAI戦略について説明会を開催した。
富士通は2024年2月14日、同社のAI(人工知能)基盤である「Fujitsu Kozuchi」や生成AIに関するAI戦略について説明会を開催した。同説明会では富士通 執行役員 SEVP CTO,CPO 兼 システムプラットフォームBG Co-Headのヴィヴェック・マハジャン氏と、同社 執行役員SEVP グローバルビジネスソリューションビジネスグループ長 兼 全社Fujitsu Uvance担当の高橋美波氏が登壇した。
マハジャン氏は、富士通が持つAI技術の強みについて解説した。同氏は「独自の生成AIとトラスト技術」「世界最高レベルのAI技術と、世界最速レベルの計算技術の融合」「7000件以上のAI導入実績」の3つを富士通の強みとして取り上げる。
1つ目の「独自の生成AIとトラスト技術」については、具体的な例として、富士通が開発した生成AIのモデルを活用して、クリエイターに合わせた着色のパターンを提案する仕組みを紹介した。マハジャン氏は、「この仕組みで使われているのが、私たちの強みでもある生成AIモデルの混合技術だ」と説明する。
ここでの混合技術とは、自社開発の生成AIモデルに、他社の生成AIやオープンソースソフトウェア(OSS)を組み合わせる技術を指す。さらにナレッジグラフ技術を組み合わせることで、法規制や社内規則に沿った生成AI活用を可能にする。
2つ目の「世界最高レベルのAI技術と、世界最速レベルの計算技術の融合」に関しては、小売店舗や工場、物流といったサプライチェーン全体などでも見える化できる「大規模ヘテロジニアスグラフAI」と、都市内の建物や機器、車両などの変化を丸ごとリアルタイムで可視化できる「ストリーミンググラフAI」を紹介した。
これら2つの技術に加えてマハジャン氏は、標的タンパク質の形状を低次元空間で捉え、立体構造や連続的変化を定量的に予測する創薬支援の技術も取り上げた。富士通の生成AI技術と理化学研究所の創薬分子シミュレーション技術を応用した技術で、すでに2023年10月にFujitsu Kozuchi上で提供開始している。
3つ目の「7000件以上のAI導入実績」については、これまでに富士通独自、あるいは他社のAIソリューションを提案して導入してきた実績を紹介した。Fujitsu Kozuchiは提供開始以来、約500社以上のグローバルな顧客に提供してきた。マハジャン氏は「今までに得た顧客の反応を踏まえて、他社のエレメントも含めつつ混合技術を活用して、AIソリューションを提案していく」と語った。
高橋氏はFujitsu Kozuchiの今後の事業展望について説明した。7つの領域で社会課題解決を目指すソリューション「Fujitsu Uvance」との関係も取り上げた。富士通はFujitsu Uvanceをオファリングサービスの事業戦略の要として展開している。
富士通は今後Fujitsu Uvanceの中でも、「Sustainable Manufacturing」や「Trusted Society」「Consumer Experience」「Healthy Living」の4分野を中心に、Fujitsu Kozuchiを導入することで顧客の利便性を高めるAI機能を搭載していく方針だ。例えば、「Sustainable Manufacturing」ではESG(環境、社会、ガバナンス)関連データのマネジメントソリューションにAIを組み合わせる形で、すでに顧客への提供を開始している。AIによってCO2排出のホットスポットを特定し、対策時のシミュレーションなどを行えるようにする。
高橋氏はTrusted Societyで提供している、生成AIとAutoMLを活用することで、より強靭なサプライチェーンマネジメントを構築するという事例も紹介した。導入したある大手製造業は、令和6年能登半島地震において、生成AIと対話することで地震発生の2日後に損益のインパクトを把握することに成功している。
この他、Consumer ExperienceではAIを用いた映像解析による来店客数の予想といった用途に加えて、パーソナライズされた顧客体験をリアルタイムで提供するといった使い方も検討している。
高橋氏は「AIの実装を加速させていくことでUvanceのオファリングを便利にしていくことが私たちの戦略だ。顧客やパートナーを含めて、クロスインダストリーで展開していくことで、より一層社会課題の解決に貢献していきたい」と意気込みを語った。
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