第193回自動車基準調和世界フォーラムにおいて、自動運転車の安全ガイドラインやEVなどのバッテリー耐久性能の国連基準が合意された。
国土交通省は2024年7月2日、第193回自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)において、自動運転車の安全ガイドラインやEV(電気自動車)などのバッテリー耐久性能の国連基準が合意されたと発表した。また、日本の提案によって議論が開始されたペダル踏み間違い時加速抑制装置の国連基準(案)の内容についても了承され、2024年11月の次回会合で採決される見通しとなった。
これらのガイドラインや国連基準は、WP.29傘下の専門分科会などにおいて日本が議長や副議長として議論をリードしてきたとしている。
自動運転車の安全ガイドラインでは、自動運転車に求められる安全性能やその評価手法がガイドラインとして策定された。このガイドラインを基に法的拘束力のある国連基準が策定される見込みだ。国際的に統一した性能評価を通じて、安全な自動運転車の開発が世界的に促進されるとしている。
自動運転車は、交通法規を順守することや、注意深く有能な人間のドライバーと同等以上の安全性を有することなどが求められると定めた。通常の交通状況や衝突の危険性がある状況、不具合発生時の3つの分類で必要なシナリオを設定して評価する。乗員にシステム作動状況や緊急時を知らせるインタラクションも求められる。これらの安全性能の要件への適合性を、シミュレーションや試験路、実交通環境で試験して評価する。製造者の安全管理体制も審査対象とする。また、使用過程でのモニタリングでも評価を行う。
EVなどのバッテリー耐久性能の国連基準は、バッテリー容量劣化度の規制値を規定するとともに、バッテリー容量劣化度を示すモニターの搭載を義務付ける。
具体的には、年間500台以上の車両の90%以上がバッテリー容量劣化度(SOCE、State Of Certified Energy)の規制値を下回らないことを求める。乗用車や小型貨物車(いずれも3.5トン以下)のEVおよびPHEV(プラグインハイブリッド車)が対象となる。
SOCEは5年もしくは10万kmのどちらかを先に満たしたタイミングで、乗用車が80%、小型貨物車が75%が規制値となる。また、8年もしくは16万kmのどちらかを満たした時点で乗用車が70%、小型貨物車が65%も規制値だ。
ペダル踏み間違い時加速抑制装置に関する国連基準(案)では、アクセルとブレーキの踏み間違いや、前方に障害物が検知された際に衝突を防止する性能要件を規定。日本の提案をベースに策定された。高齢ドライバーなどによる事故の削減に向けて、次回会合での合意を目指す。対象車両は自動変速機(AT)を備えた乗車定員9人以下の乗用車とした。
急発進抑制、ドライバーへの警報、機能の解除条件に関する要件を規定した。急発進抑制に関しては、障害物の手前1.0mおよび1.5mの停止状態でアクセルをフルストロークまで踏み込んだ場合に、障害物に衝突しないこと、もしくは障害物との衝突時の速度が時速8kmを超えず障害物がない状態に比べて30%以上速度が低下していることを求める。ドライバーに対しては視覚警報が必須だ。解除中のドライバーへの表示や、機能の復帰条件についても要件を定めた。
なお、型式指定申請における不正事案について、WP.29の関係国から高い関心と懸念が示され、特に英国やドイツからは今後の日本での再発防止の徹底に期待を寄せる発言があったという。
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