IOWN実装でサステナブル社会を作れるか NTTと早稲田大学が共同研究開始製造マネジメントニュース

NTTは早稲田大学と、IOWNを軸に、サステナビリティを巡るさまざまな課題に新しい価値を提供する共同研究を開始すると発表した。

» 2024年07月04日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 NTTは2024年6月5日、光ベース技術のネットワーク構想「IOWN」を軸に、サステナビリティを巡るさまざまな課題に新しい解決策を提供するため、早稲田大学とビジョン共有型共同研究を開始すると発表した。2024年度から開始し、研究期間は3年程度を予定する。

早稲田大学 総長の田中愛治氏とNTT 代表取締役副社長 副社長執行役員の川添雄彦氏 早稲田大学 総長の田中愛治氏とNTT 代表取締役副社長 副社長執行役員の川添雄彦氏

文理融合の横断的研究体制の構築目指す

 今回の共同研究では、「地球愛」をNTTと早稲田大学の共同研究ビジョンに定めて、サステナブルな社会の実現に必要な新しい価値の創出を目指す。地球環境やエネルギー、スポーツ/健康、食の4つを主要な研究テーマとして定める。

 ICTやAI(人工知能)、量子技術やロボット工学、エネルギーマネジメント技術、環境ゲノム工学といった理工学系の研究に加えて、政治学、経済学、経営学、法学、文学、言語学など人文社会科学系の研究もカバーし、文理融合で学際的な取り組みを進める。理工学系では基礎的研究や自然現象、人間の情動に関する研究を、人文社会科学系では新しい制度や技術の創出などを目指す。

 スマートフォンなどのデバイスやAI、IoT(モノのインターネット)の普及によって人々の行動変容が生じると同時に、通信トラフィックの増大や通信施設の大量のエネルギー消費などを引き起こしている。両者はこうした課題を解決し、持続可能な社会を実現するための共同研究をこれまでにも行ってきたが、研究室単位での取り組みが通例となっていた。しかし、複雑化するグローバルな社会課題の解決には、複数の組織や研究分野を横断する研究が必要になる。今回は、こうした共同研究体制の構築を目指す。

 共同研究にはNTTと早稲田大学の双方から39人の研究者が参加する。NTTからは、NTT人間情報研究所、NTT社会情報研究所、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所、NTTネットワークサービスシステム研究所、NTT宇宙環境エネルギー研究所、NTTコミュニケーション科学基礎研究所、NTT物性科学基礎研究所の研究者が参加する。一方で早稲田大学からは、カーボンニュートラル社会研究教育センターやスポーツ科学センター、スマート社会技術総合研究所機構、グリーンコンピューティングシステム研究機構、ナノ・ライフ創新研究機構、データ科学センター、ビジネス・ファイナンス研究センターの他、幾つかの研究所などが含まれる。

 共同研究体制の技術的な主要軸となるのが、NTTが掲げるIOWN構想だ。低消費電力かつ大容量高品質、低遅延などを特徴とする情報通信基盤の構築を目指す取り組みだ。今回の早稲田大学との取り組みでは、「(早稲田大学の)高い研究力と文理の垣根を越えた研究力」(NTT)を評価し、IOWNの社会実装によるサステナビリティ実現に向けた多角的な検討と技術検証などを進める。

 早稲田大学の側では、2024年4月に新設された共創的研究を担う組織「Global Research Center(GRC)」が今回の共同研究の中心的役割を担うことになる。GRCは「統合知による人類への貢献」をスローガンに、早稲田大学 総長らのトップダウンの研究力強化の施策展開と、各研究所の独創的かつ萌芽的な研究提案を受け付けるといった双方向の研究推進の仕組み構築を目指す組織だ。同組織の意義について、早稲田大学 総長の田中愛治氏は「早稲田大学にはさまざまな研究所などがあるが、これまではバラバラで、全学を連携する形で研究を推進する力が弱かった。これを一貫した理念で統一していく必要があった」と説明する。

 今後の共同研究の展望について、NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員の川添雄彦氏は「NTTにも研究所はあるが、カバーしきれていないところは多々ある。早稲田大学との新しいコラボレーションで新しい時代を生み出す取り組みを推進したい」と語った。

 共同研究の初年度は研究内容の具体化と基礎検討を、2年目は技術検証、3年目は社会実装に向けた実証を予定している。

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