矢野経済研究所は、国内のCCUS技術に関する調査結果を発表した。CCUS事業の拡大に伴い、2050年度にはCCUS技術による国内のCO2回収量が年間1億4600万tに拡大する見込みだ。
矢野経済研究所は2024年5月23日、国内のCCUS(Carbon dioxide Capture、Utilization and Storage=回収、有効利用、貯留)技術に関する調査結果を発表した。CCUS事業の拡大に伴い、2050年度にはCCUS技術による国内のCO2回収量が年間1億4600万tに拡大する見込みだ。
CCUS技術とは、火力発電所などの排気ガスに含まれるCO2を分離、回収して、化学品や燃料の製造に有効利用したり、地下に貯留する技術だ。同技術による2022年度の国内CO2回収量は、60万t-CO2/年と推定。これは約22万世帯分の年間CO2排出量に相当し、国内総世帯数(2023年1月時点)の約0.4%となる。
経済産業省資源エネルギー庁が2023年3月に発表した「CCS長期ロードマップ」では、2030年以降の本格的なCCS事業の開始を目指し、同年までに基盤整備を行うとしている。2024年2月には「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」が閣議決定され、2030年以降の本格化に向けた整備が進んでいる。
また2023年6月には、エネルギー・金属鉱物資源機構が「先進的CCS事業」として7事業を選定。CO2の分離、回収から輸送、貯留までのバリューチェーンを一体的に支援しており、発電、石油精製などの事業者が参画してCO2の分離、回収や輸送、貯留の各分野で、これまでの知見を生かした取り組みを開始している。
こうしたCCS事業の本格化に向けた動きから、CCUS技術によるCO2回収量は2030年度に1100万t-CO2/年、2050年度には1億4600万t-CO2/年に達すると予測する。2050年度の回収量は、環境省が発表した2022年度の国内CO2排出量10億3700万t-CO2/年の15%弱に相当する。
なお、先進的CCS事業に選定された7案件は2030年までの事業開始を予定し、全事業の合計で年間約1300万tのCO2を貯留する計画だ。これにより、国内のCO2回収量は飛躍的に増加すると考えられる。
分離、回収したCO2を活用するカーボンリサイクル技術については、一部は実用化されているものの、多くが技術開発段階にある。実用化済みの技術も、コスト低減という課題が残る。そのためカーボンリサイクル技術の社会実装が本格化するのは、2030年前後になる見込みだ。
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