ここからは記者会見における津賀氏と報道陣のQ&Aセッションの要旨を紹介する。
記者 JEITA主催のCEATEC 2024と日本自動車工業会主催のジャパンモビリティショー2024との併催について。
津賀氏 両者は、2011年の東日本大震災を受けて共同でメッセージを発信するなど、過去にも交流があった。東京モーターショーがジャパンモビリティショーに変わり、先方から一緒にやろうというお話をいただいた。私自身は大変ありがたいことだと思っている。
私も前回のモビリティショーを拝見したが、クルマ社会が今後どう新しく変化していくか、モノを見ることで将来の姿に目が向かう。非常に大きな意味がある。一方、CEATECは技術を見せることに変化しており、専門分野なため細かな話になってしまう。それが2つの展示会を同じ会場で行うことで、来場者にイメージをつないでもらえるというのはとてもありがたい。
記者 生成AIのルール作りに関して、どんな取り組みが必要になってくるか。
津賀氏 生成AIは著作権や個人情報、誤情報などさまざまなリスクはあるが、これからのイノベーションをけん引する画期的な技術だ。このイノベーションの芽を決して摘んではいけない。人類のためにも前に進める技術であり、そうでなければならないというのが基本的なJEITAのスタンスだ。
われわれで個別のルールを作るというよりも、グローバルに流れを正しい方向に導いていく活動をしっかり支援する。G7の広島サミットで合意された広島AIプロセスに基づいて、経済協力開発機構(OECD)の場で国際的な議論が進んでいることも非常に歓迎している。
記者 日本からAIに関連する最先端の製品が出てくる状況にないが、その点についてはどう考えるか。
津賀氏 企業においては、AIで生産性を改善できる、従来のやり方を変えられる領域が山のように存在する。そこに向けて“手触り感”を持って進められる状態まで持っていくことが大事だ。ただ単にAIを使ったらいいという話ではなく、AIを使って何をしたいのかが重要となる。
これは大きな言葉で言えば、やはり活動のトランスフォーメーションだ。やり方を根本的に変えるためにAIをどう活用するのか。AIが絶対ではなく、AIをどう使ってトランスフォーメーションを進めるのか、その視点が私にとっては一番大事だ。従来のやり方をAIに置き換えるというのは、個人的には企業や人類の進化にプラスにならないと思う。AIそのものに人が適正に絡まなければ間違った使い方をしてしまう。これも避けなければならない。
記者 欧州で進む産業ごとのデータ連携基盤の動きについてどう思うか。
津賀氏 パナソニックは欧州でリチウムイオン電池のビジネスを進めており、非常に重要な要素になっている。
ポイントとしては、見える化とガバナンス強化に取り組むことが、社会のためになるということがだいぶ共通認識になってきた。そのやり方について、先行している欧州流がいいのか、欧州流を学びながら日本としてどう展開していくのがいいのか、日本流を皆で一生懸命考えて進めているところだ。
欧州はマーケット起点で規制をかけようとしている。場合によっては、そういう進め方が必要な分野というのは間違いなくある。それがベストかどうかも含めて、日本は日本流をきっちり考えていくというのが今のスタンスではないか。
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