原価改善は「一緒に生産性や競争力を上げていくため」、適正取引を徹底製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日本自動車工業会は適正取引に関する自工会方針と今後の取り組みを発表した。

» 2024年05月24日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日本自動車工業会(自工会)は2024年5月23日、定例の記者会見を開き、適正取引に関する自工会方針と今後の取り組みを発表した。

 原材料費やエネルギー費の上昇については、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す。労務費は、仕入れ先との協議の上で適正に価格転嫁するとしている。これらの方針を織り込んで「適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」の改訂版と、実効性を高める「徹底プラン」を2024年5月中に発表する。また、日本自動車部品工業会(部工会)とも協力し、自動車産業のサプライチェーン全体で適正取引の実現を目指す。

 「全額転嫁」に関しては下請法(下請代金支払遅延等防止法)に関係する企業だけでなく、パートナーに対する基本姿勢として掲げる。価格転嫁と原価低減について、自工会 会長の片山正則氏(いすゞ自動車 会長)は「価格上昇分を受け止めるが、よりクリアにした上で原価低減も今まで以上にやっていく。競争力の源泉なので、サプライヤーに押しつけるのではなく自動車メーカーもやっていくことだ」と述べた。

 原価低減の意義について自工会 副会長の佐藤恒治氏(トヨタ自動車 社長)は「産業全体で競争力や生産性を上げていくのが原価低減だ。自動車メーカーが工夫してやった方がいいこともあるし、サプライヤーに共有して生産性を上げてもらう部分もある。コミュニケーションをとりながらやっていくことだ。生産性を上げたいけれども人手が足りず、今の生産が精いっぱいだという現場がたくさんある。余力のない企業を助けていくのが、配分や購入価格に現れると考えている」と語った。

自工会の片山正則氏[クリックで拡大] 出所:自工会

 2024年3月に公正取引委員会から下請法違反で勧告を受けた日産自動車が下請代金の減額を続けていると報道されたことを受けて、会見に出席した自工会 副会長の内田誠氏(日産自動車 社長)は「勧告後、減額分を返金するとともに割戻金の運用を廃止するなど再発防止に取り組んできたが、取引先との信頼関係構築に取り組む中、このような報道があったことを重く受け止めている。全てのステークホルダーに対して申し訳なく思う。企業としてサプライヤーに向き合った体質になれているのか、買う立場が誤った形で使われていないか、きちんと見ていきたい。当社がサプライヤーと寄り添って競争力を上げていこうとしている中、当社からのケアが足りていないのであれば正していく」とコメントした。

 また、調査の状況について「報道後、私が責任者となって外部の弁護士を含めた調査チームを立ち上げて事実確認を行っている。調査結果は公正取引委員会や経済産業省にも報告しながら調査を進めているが、最終的な確認には至っていない。今後1週間をめどに調査結果を説明する時間を持ちたい」(内田氏)と述べた。

自工会の内田誠氏[クリックで拡大] 出所:自工会
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