3Dプリンタで成形する複合材料は世界を変えるか?複合材料と3Dプリンタのこれまでとこれから(1)(2/4 ページ)

» 2024年05月16日 08時00分 公開

複合材料を成形できる3Dプリンタの市場動向

 連続繊維入りの複合材料を成形できる3Dプリンタについてはスイスのベンチャー企業である9T Labsも販売しており[参考文献3]、日本でも入手できます。9T Labsの3Dプリンタを図5に示します。これは数mm幅の繊維強化熱可塑テープをアイロンのようなプリントヘッドで融着させて積層していく装置であり、自動テープ積層装置に近いものです。この装置だけでは形状を作ることしかできず、高い強度を得るには金型にはめて加熱融着の処理が必要です。このため、いわゆる巷(ちまた)にある純粋な3Dプリンタとは少し異なります。

図5 9T Labsの3Dプリンタ 図5 9T Labsの3Dプリンタ[クリックで拡大] 出所:東京大学 大学院工学系研究科の横関智弘氏

 複合材料を成形できる3Dプリンタに関しては米国における市場動向の予想が公開されていますので、そのデータをプロットした結果を図6に示します[参考文献4]。図6を見ると、2028年以降に急速に市場が拡大していくと予想されていることが分かります。その原因は航空宇宙分野や建築土木分野での活用が増えるからだとされています。

図6 複合材料成形可能な3Dプリンタの米国における市場動向予想 図6 複合材料成形可能な3Dプリンタの米国における市場動向予想[クリックで拡大]

 しかし、この予測が何を根拠としているかは不明です。この予測で複合材料を成形できる3Dプリンタの市場が拡大するとしているのは、米国のウィチタ州立大学が運営する民間認証機関「NCAMP」が、Markforgedの複合材料やその材料を成形できる3Dプリンタを認証し同機関のデータベースに登録する機会が増えていることが関係していると筆者は想像しています。

 というのも、NCAMPで認証されると、米国連邦航空局(FAA)や欧州航空安全局(EASA)でも安全性に問題ないと認証されるため、航空宇宙分野で採用されやすくなります。加えて、NCAMPが運用する航空機用構造材料データベースの作成にMarkforgedが2023年6月まで協力しています[参考文献5]。このデータベースでは航空機用構造材料をMarkforgedの3Dプリンタで成形するために必要な情報が掲載されているため、このデータを用いて航空宇宙分野向けの機械部品をMarkforgedの3Dプリンタで成形できます。

 2023年12月には、NCAMPで認証された製品として、Markforgedから航空機用の連続炭素繊維PEKK複合材料「Vega」がリリースされています[参考文献5〜6]。VegaはMarkforgedの3Dプリンタ「FX20」用の3Dプリントフィラメントです。現在はFX20のような、レベリング(水平化)や温度管理などが自動化された高級機種でNCAMPで認証された連続繊維入りの複合材料が多く使われています。そのため、NCAMPで認証された複合材料を手軽に成形できるようになってくる時代がすぐそこに来ていると思われます。これらの製品の普及に3〜4年程度かかると想定すれば、2028年から複合材料を成形できる3Dプリンタの需要が急激に伸びることはそれほど間違っていないように思われます。

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