大王製紙は、セルロースナノファイバー複合樹脂「ELLEX-R67」の商用プラントを三島工場(愛媛県四国中央市)に設置。三島工場の営業運転開始は2025年度を予定しており、生産能力は年産2000トンとなる。
大王製紙は2024年5月8日、セルロースナノファイバー(CNF)複合樹脂「ELLEX-R67」の商用プラントを三島工場(愛媛県四国中央市)に設置すると発表した。
同商用プラントの生産能力は年産2000トン(t)。設備投資額は約40憶円で、営業運転開始は2025年度中を予定している。
今後は、2025年度の商用プラント稼働に向け、自動車部材、家電製品、建材、日用品、容器/包装などの分野におけるCNF複合樹脂の用途展開を進めていく。中でも、軽量化、マテリアルリサイクル、植物由来など、CNFの優位性を生かせる自動車部材としての利用拡大を目指し、供給量を増大して、顧客と連携して大型部材試作などの評価を進めていく。
同社は、2013年にCNF水分散液のサンプル提供を開始して以降、多様なユーザーニーズに対応できるラインアップの拡充とコスト低減のためにパイロットプラントで製造プロセスの開発を進めてきた。特にCNFの特徴を生かせる複合樹脂に対する市場からの期待が大きいことを踏まえて、製紙会社が有するポテンシャルを活用して、パイロットプラントでの製造プロセス開発を推進。この成果を生かして、さまざまな用途展開に対応できるCNF複合樹脂を生産するために、今回の商用プラント設置を決定した。
ELLEX-R67は、部分的にCNF化したセルロースを67%含む高濃度ペレットで、樹脂材料設計の自由度が高く、顧客が混練/成形加工しやすい。さらに、CNFが植物由来で繊維が破断しにくいことから、プラスチック量の削減やマテリアルリサイクルも期待できる。
CNF複合樹脂の製造プロセス開発に関して、同社は2020〜2022年度にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発プロジェクト助成事業」に取り組んだ。これにより、CNFを社会実装する上で課題となる製造コストの低減を目的に、CNFの前処理プロセスや複合樹脂の生産性の改善を進めた。
中でもCNF前処理プロセスについては、製紙プロセスで原材料や薬品の調整を行う抄紙の技術を駆使して尿素によるカルバメート化セルロースの量産技術を確立している。加えて、複合樹脂の生産性改善では芝浦機械と共同で高効率なCNFと樹脂の複合化技術を開発した。
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