連載「設計者CAE教育のリデザイン(再設計)」では、“設計者CAEの教育”に焦点を当て、40年以上CAEに携わってきた筆者の経験に基づく考え方や意見を述べるとともに、改善につながる道筋を提案する。連載第3回では、設計に必要な解析技術を開発し、設計者が使用できる環境を構築する「逆算のCAE」のアプローチについて解説する。
前回、設計者がCAEをやりたがらない理由を紹介しました。トップ3は以下の通りです。
この3つに共通していることがあります。それは「時間」です。上の3つを言い換えれば……、
となります。まずは、この「時間がない問題」を解決しなければなりません。
ここで重要なのが、CAEを行う時間を捻出するという考え方ではダメだということです。CAEを使うことによって、設計プロセスのどこかの時間が短くならなければ意味がありません。
図1のフェーズ1をご覧ください。CAEを実施するために必要な時間がどんなに短くても、現在の設計作業時間に足し込まれるのでは、問題の解決になりません。これでは設計者が受け入れるはずがありません。
CAEを使うことによって、設計プロセス2が短縮できることが分かりました。それが図1のフェーズ2の状態です。CAEによって設計プロセス2は確かに短くなりました。しかし、トータルでは設計時間をわずかにオーバーしてしまいます。フェーズ2のコメントには「CAEを使っても設計時間が延びる?! ムリ、ムリ、ムリ……」とありますが、少し補足します。
設計者やその管理者の皆さんは、常にQ(Quality:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:納期)を意識しています。品質を高める、コストを削減する、納期を短縮する、そのためなら、考えられる全ての努力をします。QCDはジャンケンのような三つどもえです。品質を高めようとすれば、コストも時間もかかるからです。設計者はこのQCDのバランスを考えます。CAEを使うことによって、フェーズ2のように多少時間が延びても、それで品質の向上が担保できれば「ヨシ!」という場合もあります。
CAEの使用によって、全体の設計時間が減ることがCAE活用の理想です(図1のフェーズ3)。
重要なのは、ここには、線形静解析や接触解析などの「CAEソフトウェアの機能」の話は一言も出てこないことです。
「CAEの導入目的」として、よくある当たり前の話のようですが、ここに、CAE活用に関するヒントが隠れています。当然の話ですが、実現するためにはそれ相当の工夫が必要です。CAEの在り方を見直す必要があります。CAEの在り方が変われば、その教育方法も大きく見直す必要があります。
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